「防衛庁」は「防衛省」になるべきか?
今年6月(第164回国会)に防衛庁設置法等改正案が提出され、9月から始まった第165回国会において、本格的な審議が始まろうとしています。今回は、この「防衛庁の防衛省への昇格問題」について書きます。
まず、防衛庁設置法等改正案について簡単に説明しますと、この法案は、(1)防衛省への移行、(2)自衛隊の国際平和協力活動等の本来任務化、(3)安全保障会議の諮問事項への明示、の3点が柱となります。そして、防衛庁設置法、自衛隊法、安全保障会議設置法をメインとして、70本もの関係法律の改正が行われるという比較的大規模な法案です。
この法案は、第164回国会に提出されましたのですが、小泉首相が最後はやる気を無くしてしまったのか、一度も審査が行われず継続審査となっていました。そして、バトンは小泉首相から安倍首相に渡され、「右」の傾向があるように見える安倍首相が走り出したというイメージです。
防衛省昇格の議論は昔からあった
そもそも、防衛庁の防衛省への昇格に関する議論は、最近出てきた話ではありません。実は、防衛庁が創設された昭和29年以来ずっと議論されてきたことたったのです。実際、防衛庁創設から10年後の昭和39年6月には、内閣から国会への提出こそ見送られましたが、内閣提出法律案として閣議決定(総理大臣と各省大臣による決定)まで行われています。
その後、平成6年に再度閣議決定をしたものの、平成9年の橋本首相下に行われた省庁再編においては、「現行の防衛庁を継続する」と決定しました。ただし、「別途、新たな国際情勢の下における我が国の防衛基本問題については、政治の場で議論すべき課題である」とされ、昇格の含みは残されました。
他にも、平成13年には、保守党が自由民主党などの賛成を得た上で、「防衛省設置法案」を衆議院に提出しましたが、同法案は衆院解散に伴い廃案となっています。
このように、防衛庁の省への昇格問題は、長年の懸案として議論されてきたものです。
防衛庁の方々と話をしていると「防衛庁の役人の気合」というものを感じます。他の役所が法案を説明するのとは違った迫力というものがあるのです。その様を見ていると、防衛庁には「庁」というものに対するコンプレックスのようなものがあるのでは?と感じてしまいます。
防衛庁が作ったパンフレット『防衛庁を省に』には、外国の国防機関が「Ministry(省)」なのに、わが国では「Agency(庁)」となっており、格が低いと見られている、と正直に書かれています(私は他国がやっているからわが国も同じにすべきという議論は、安全保障に関してはないと思っています。特殊な憲法を持った国として独自の安全保障概念を創るべきではないでしょうか)。では、なぜ防衛庁を省に昇格させる必要があるのでしょうか。