「防衛庁」は「防衛省」になるべきか?

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何のための防衛省昇格か?

 政府(防衛庁)は、省移行が必要な理由として、以下の6点を挙げています。

(1) 大規模災害や北朝鮮による弾道ミサイル発射事案の生起、国際平和のための活動の増加など、さまざまな危機や国際社会の取組に迅速・的確な対応が求められるようになってきた

(2) 省移行により、防衛大臣(現在:防衛庁長官)が、安全保障や危機管理の問題に「国の防衛」の主任の大臣として取り組むことができる

(3) 平成9年の行革会議最終報告以降政治の場で議論が続けられ、有事法制が整備され、省にふさわしい組織変革も行われた

(4) シビリアンコントロール、専守防衛等防衛政策の基本が変わることはない

(5) 諸外国の国防組織はすべて「省」であり、それらの組織との防衛交流も実施しており諸外国の理解を得ることができる

(6) 防衛施設庁入札談合事件にもきちんと対応している

 しかしながら、私としては、これらの主張に対し、やや違和感を感じます。

省昇格の必要性は薄い 

 (1)については、「北朝鮮の弾道ミサイル実験」という突発的な事件以外に「なぜ今必要か」という理由にはならないと思います。大災害や国際平和貢献などは昔からある案件です。そして、北朝鮮の核実験は、あくまでも突発的な問題であり、この問題への対処を理由にすることはあまり説得力がありません。

 変化する東アジアの軍事バランスへの長期的な対応であれば、議論する問題ですが、「北朝鮮の核実験+弾道ミサイル実験」は防衛省昇格の理由にはつながりにくいと思います。何か新たな機能を防衛庁に追加するのであれば「省への昇格」もあり得るでしょうが、機能的な追加や変化もないままでは「省から庁へ格上げする」必要性が低いのではないでしょうか。

 (2)や(3)について、「防衛庁長官は、現在、国務大臣(防衛庁設置法で規定)」であり、「内閣法上、国務大臣は、他の省の大臣と同格の権限を保有」しています。有事法制等の整備に対応するにあたり、法的にも実際の執務上も問題はほとんどないはずです。

 (4)については、総理大臣の指揮権が十分確保できるのか、という問題があると考えます。防衛庁は、「役人が自衛隊をコントロールすることがシビリアン・コントロール」だと思われているようですが、アメリカなどもベトナム戦争以降、「軍の管理権限を議会にも持たせる」ようになっています。つまり、「国会による軍事力の管理が、シビリアン・コントロール」なのではないでしょうか。私の知り合いの外務省の方も「防衛庁は勝手に走る」と同様なことをおっしゃっていました(まあそれを言うと、外務省も国会から離れて独自に動いているように見えますが・・・)。

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