絶好調の伊藤園「茶カフェ」に映る静かな危機感 定番として盤石の地位だが新たな魅力も必要

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総じて価格は高い。「抹茶『万暦の昔』(菓子付)」(1430円。価格は税込み、以下同)、「日本茶『八女玉露』(温)」(1100円)、「紅茶『京都和紅茶』(温)」(880円)。ほかに「チーズティー」(各935円)、フードでは「抹茶バケットサンド」(1100円)となっている。

店は「“お茶の新しい楽しみ方” “お茶との接点”の提案」も掲げる。だが価格は、渋谷に来る若者には、高いのではないだろうか。

「例えば東京ディズニーリゾートは、あれほどの入場料(1デーパスポートで、通常は大人7500円)でも人気は高いです。この店は、厳選した茶葉を自分でいれることができるメニューもあり、若者や外国人には新しい体験として感じてもらえるのではないでしょうか」と山口氏は説明する。

「カフェの飲食」だけでなく「体験型としての飲食」もあるようだ。11月8日の取材時は、平日昼間という時間帯もあり、中高年女性を中心に繁盛していた。

「オチャ ルーム アシタ イトウエン」の飲食メニュー、チーズティーと抹茶バケットサンド(筆者撮影)

主力の緑茶飲料は好調

こうしたチャレンジができるのも、本体の事業が絶好調だからだ。数字面で説明しよう。

2019年4月期の伊藤園の連結売上高は約5042億円、経常利益は同232億円。5期連続の増収増益を果たした。

国内(単独)売上高「約3945億円」の9割弱を飲料売り上げが占め、その半分「約1988億円」が日本茶・健康茶だ。主力商品「お~いお茶」は今年(2019年)ブランド発売30年となり、海外は北米や豪州、中国、東南アジアなどで拡大してきた。

また、国内飲料市場における「無糖飲料製品」構成比は「2018年は約49%」(全国清涼飲料連合会調べ)と、半数が無糖になった。飲料カテゴリーでは近年、無糖の炭酸水が驚異的な伸びを示し、むぎ茶飲料の伸びも著しいが、緑茶飲料も手堅い。緑茶の市場は20年で2倍以上、2018年で約4450億円(伊藤園調べ)だという。

「緑茶+そのほかの茶系」(紅茶・むぎ茶・ウーロン茶など)を合わせると「約9450億円」となり、この茶系をすべて合わせた売上高は長年、飲料市場をリードする「コーヒー飲料市場の約9330億円」に匹敵する。少子高齢化・人口減で業績拡大に苦しむ分野が多い中、底堅い市場なのだ。

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