米景気後退を食い止めるシナリオはあるのか?

トランプ政権は景気後退懸念を払拭できるか

ただし、株価が上昇基調を強めているからといって、アメリカの景気の減速がすぐに止まるというわけでもないだろう。一連の上昇のきっかけとなった10月の雇用統計では、非農業部門雇用者数(NFP)が前月比で12万8000人増と、予想を上回る伸びとなったが、今年5月に10万人を大きく割り込んで以来の低い伸びにとどまったのも事実。

年初からの累計では167万人、1カ月当たり16万人7000の増加と、前年同期の225万6000人、月平均22万5600人を大きく下回っている。ほかの経済指標も、10月分には予想を上回るものがいくつか出てきたが、9月分までの大幅な悪化の反動の域を出ておらず、状況は依然として厳しいと考えておいたほうがいいだろう。

前回の記事「『米景気後退は不可避』といえるこれだけの理由」では、アメリカの景気がリセッションに向かっているというサインとなるものをいくつか紹介したが、こうしたものは月ごとのデータのブレによって、簡単に変わるものではない。この先経済指標が再び悪化、市場の懸念が高まる恐れは高いと見ておいたほうがいいだろう。

大統領選控え、あの手この手の景気対策発動の可能性

もちろん、現時点で多くのデータが景気の更なる減速、あるいはリセッションを示唆しているからといって、それほど悲観一色になる必要はないだろう。ここから状況が何1つ変化しないというのであれば、深刻なリセッションに陥る可能性もかなり高いとは思われるが、前提条件は刻々と変化していくものである。

とくに来年に大統領選挙を控える中、トランプ大統領はこの先も再選に向けて株価を押し上げるため、あの手この手の景気対策を打ち出してくる可能性は高いと考えておいたほうがいい。そうした政策や状況の変化がうまく作用すれば、景気の減速や株価の調整が限定的なものにとどまることも、十分にありうるのではないか。

ここではこの先の景気減速を食い止めることができるシナリオとして、どのようなものがあるのかを考えてみたい。

景気減速を食い止めるのにいちばん手っ取り早く、また確実な手段は、米中貿易交渉を終結させ、これまでに賦課した制裁的な関税をすべて撤回することだろう。ここまでの世界的な経済の変調の大半は、アメリカが貿易戦争を仕掛け、対中国のみならず関税の引き上げ姿勢を強めてきたことが原因にあると言っても過言ではないからだ。米中が包括的な合意に至れば市場の不安も大幅に後退、経済活動も活発になりそうだ。

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