｢ジョーカー｣製作会社がハマった儲けの大誤算 投資の｢リスク分散｣がもたらすしっぺ返し

ハリウッドにはまた、勇敢にも一匹狼で通したあげく、がっぽりと儲けた武勇談も、まれながらある。俳優のメル・ギブソンが監督した『パッション』が、その代表例だ。

イエス・キリストの話を、英語ではなく当時に忠実な言語で語るこのプロジェクトは、ハリウッドのトップスターだったギブソンのパワーを持っても、すべてのスタジオや出資者からそっぽを向かれた。

諦めきれないギブソンは、「他人のお金で遊ぶ」というハリウッドの“鉄則”を無視して、3000万ドルの製作費を自分の懐から出すと決める。おかげで彼は、映画が全世界で6億1000万ドルを売り上げる爆発的ヒットになると、その利益をすべて独り占めすることができた。

映画製作は「ギャンブル」だ

M・ナイト・シャマラン監督も、近年はもっぱら自腹派だ。彼の場合は、もっと切実な事情がある。『シックス・センス』から『ヴィレッジ』までの4作をディズニーの下で製作、成功させた彼は、以後、ワーナー、フォックス、パラマウント、ソニーと組み、毎回、大損させてしまったのだ。

最後に残ったユニバーサルと『ヴィジット』で組むにあたり、彼は、製作費をすべて自腹で出し、配給だけをユニバーサルにお願いすることにして、ユニバーサルに傷が及ばないようにした。

そして、500万ドルで作ったこの映画は、世界で9800万ドルを売り上げ、見事成功するのである。やはりユニバーサルに配給してもらった次の『スプリット』にも、シャマランは900万ドルを投資し、2億7800万ドルの世界興収を得た。

さらに気をよくした彼は、今年1月公開の『ミスター・ガラス』に、2000万ドルを投資する。しかし、結果は『スプリット』を下回る2億4600万ドルだった。損ではないものの、ブルース・ウィリスとサミュエル・L・ジャクソンが出演する『アンブレイカブル』の続編とあり、本人も、もっと儲かると見ていたのは、疑いの余地がない。だからこその大胆な投資だったはずだ。

しかし、見返りはそれに比例しなかった。映画ビジネスは、やはりギャンブル。映画に人生の大部分を捧げた経験豊かなプロにとっても、それは変わらない。映画の世界は、スクリーンの中でも、外でも、同じくらいドラマチックなのだ。

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