「ジョーカー」製作会社がハマった儲けの大誤算 投資の「リスク分散」がもたらすしっぺ返し
ジョーカーが、高笑いを続けている。鬱積されたものが爆発する、あの笑いではなく、誇らしげな、勝利の笑いだ。
全世界公開から40日以上経つ今も、映画『ジョーカー』は、ほぼすべての国でトップ10圏内に君臨し続けている。今週月曜日の段階で、世界興収は9億8500万ドル。数日以内に10億ドルを超える見込みだ。R指定作品がこの大台を超えるのは、初めてのことである。
特筆すべきは、今年10億ドルに達した6本の映画(『アベンジャーズ/エンドゲーム』『ライオン・キング』『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』『キャプテン・マーベル』『トイ・ストーリー4』『アラジン』)が1億6000万ドル以上の予算を与えられた超大作に対し、『ジョーカー』の製作費は3分の1近い6000万ドル弱にすぎない。
つまり、利益率において、今作はダントツに高いのである。しかも、ほかの6作品と違い、世界第二の映画市場である中国で公開されることなく、ここまで稼いでみせたのだ。
予想外だった『ジョーカー』の大成功
製作配給のワーナー・ブラザースにとって、それはもちろん最高にうれしいニュース。だが、同時に、歯がゆくもあるかもしれない。
製作時、典型的なスーパーヒーロー映画とはほど遠いこの映画が、観客にどう受け止められるか不安に感じたワーナーは、ヴィレッジ・ロードショー・ピクチャーズとブロン・スタジオズの2社から出資を募り、リスク分散をはかった。報道によると、同社はそれぞれ製作費の20%から25%を出資したそうである。たかだか6000万ドルくらいのこと、ヒットするとわかっていれば、ワーナーは全部自分たちで出して、利益を独り占めしたはずだった。
だが、その「わかっていれば」が、難しいのだ。そのために公開前の調査がさんざんなされるわけだが、手放しで当てにするのは難しい。実際『ジョーカー』の事前調査は微妙な数字だったし、公開前にはバイオレンスを危惧して映画館が警戒態勢を取るなどのニュースも出た。当時は、まだワーナーも不安のほうが大きかったと思われる。
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