人口減と借金で「30年後に日本終了」の現実味 ジム・ロジャーズと岡本祥治が語る

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岡本:一方、大企業では仕事を変える人と遭遇する機会は少ないかもしれません。ですから、例えば大企業でフリーランサーを雇う機会が増えれば、大企業の人でも仕事を変えたり、フリーランスになる選択肢を考えるきっかけになる。日本の大企業がより多くのフリーランサーを利用するようになれば、日本企業の労働文化も変わるのではないでしょうか。非常にゆっくりかもしれませんが。

ロジャーズ:非常にゆっくり、なのが問題だと思います。あなたが言っていることは「非常にゆっくり変わる」ということも含めてすべて正しいと思います。移民についても同じことでしょう。しかし、非常にゆっくり変わっている間に人口は減り、借金は増えていく。あなたが言うことは正しいけれど、その間に日本は沈んでしまいます。

世界で課題を抱えていない国はない

――高度人材は日本で働きたいと思っている?

ロジャーズ:それはもちろんです。多くの人は日本にくれば稼げると思っています。インフラは整っているし、清潔ですべてが効率的で、食事も何もかも素晴らしい。

ところが、日本は「日本で働いてほしい」と言いながらも、それは本心ではありません。過去500年間、日本は外国人を避けてきている。実際に住む人が増えていても、日本人が外国人を受け入れるには相当の時間がかかるし、外国人も日本人は外国人が苦手だとすぐに気づくでしょう。

「日本の将来は悲観するものではなく、私自身は日本にいたほうがいいとアドバイスします」(撮影:佐々木仁)

――10歳の日本人だったら日本から逃げるべき、ということですが、20代、30代だったらどうでしょう。若い人へのアドバイスはありますか。

ロジャーズ:「とにかく心配したほうがいい」ということでしょうか。安倍首相は消費増税を実地し、これが国の問題を解決すると論じていますが、増税が国を救ったことはありません。若者の多くは公務員になることを希望していますが、それが国を救うこともないでしょう。

岡本さんは、日本が30年後に素晴らしい国になっていると思いますか。

岡本:難しい質問です。ただ確かに日本は難しい問題に直面していますが、日本の将来は悲観するものではなく、私自身は日本にいたほうがいいとアドバイスします。

それに、世界で課題を抱えていない国は存在しないと思います。日本は大変な状況ではありますが、世界の中では恵まれている。また、この厳しい社会課題を解決できたら、世界に先んじて課題解決をした国として、これを糧に再び世界で経済発展を遂げる国になるのではないでしょうか。

ジム・ロジャーズ 投資家、ロジャーズホールディングス会長

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Jim Rogers

1942年、米国アラバマ州生まれ。イェール大学で歴史学、オックスフォード大学で哲学を修めた後、ウォール街で働く。ジョージ・ソロスとクォンタム・ファンドを設立し、10年間で4200パーセントという驚異的なリターンを上げる。37歳で引退した後、コロンビア大学で金融論を指導する傍ら、テレビやラジオのコメンテーターとして活躍。2007年よりシンガポール在住。ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスと並び世界三大投資家と称される。 主な著書に『冒険投資家ジム・ロジャーズ 世界大発見』(日経ビジネス人文庫)、『危機の時代』(日経BP)、『ジム・ロジャーズ 大予測』(東洋経済新報社)『大転換の時代』(プレジデント社)がある。

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岡本 祥治 みらいワークス社長

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おかもと ながはる / Nagaharu Okamoto

1976年神奈川県生まれ。慶應義塾大学理工学部卒。アクセンチュア、ベンチャー企業を経て、47都道府県を旅する過程で「日本を元気にしたい」という思いが強くなり、起業を決意。2012年、みらいワークスを設立し、2017年にマザーズ上場を果たす。BS JAPAN 「人生が変わる人事の話」に人事の専門家として、20回以上出演。趣味は読書と焼肉と旅行。海外は93カ国以上に渡航。

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