再び、冒頭の問答に話を戻そう。「現在、人口も減っているからエネルギー全体の消費も減り、それが再生可能エネルギーで置き換えられる」というのは、一定の説得力があるように見える。確かに人口が今後50年で約3割も減少し、さまざまな技術革新が行われれば、その掛け算で比率が上がっていくというものだ。
だが、再度言うが、国の目標は、2050年に向けてCO2の80%の削減である。この一般的な回答と、国の目標には大きな乖離がある。
紹介がすっかり遅れてしまったが、冒頭の写真の高校生は、最近ずいぶん報道されたので、知っている方も結構いらっしゃると思う。彼女はグレタ・トゥンベリさん、スウェーデンの16歳の高校生だ。彼女は大人が地球温暖化に対して、真剣に立ち向かわないことに腹を立て、スウェーデンの国会前で座り込みのデモを行った。
それを見た政治家は、「高校生なのだから、勉強をするために学校に戻るように」とメッセージを出すが、「学校でいくら勉強しでも、地球が壊れてしまったら、勉強する意味がない」と言って、意に介さない。その運動が次第にヨーロッパ全体に広がり、毎週金曜日の「フライデーフォーフューチャー」(未来に向けての金曜日)というデモにつながっていった。
日本の企業で環境問題に「当事者意識」がない理由
それが今ではヨーロッパ全体に広がり、若者が既存の社会に対する「抗議」として、政治的にも大きなうねりとなっている。5月26日に行われた欧州議会選挙において、アンゲラ・メルケル首相率いるキリスト教民主同盟、社会民主党などの2大政党が議席を減らす中、環境政党である「緑の党」が大躍進をして、第2党に躍り出た。
このように、若者の力が政治をも変えようとしている。まさに環境は、政治の大きなテーマになりつつある。
日本でこういう議論をしていても、残念ながら、地球温暖化対策は会社の経営者にとって、中長期でも大きな問題になりにくいという。会社の経営者は、オーナー系ならまだ別だが、自分が役職につく任期があまりにも短く、ロングスパンでものを考えられないというわけだ。
だが、そんなことを言っていると、ますます世界の流れに大きく後れをとることになる。すでにご存じのように、世界のマネーの出し手である主要な金融プレーヤーは「ESG投資」という言葉に代表されるように、地球の気候変動をリスクとして認め「環境、社会、ガバナンス」のある企業を優先して融資をしようとしている。
この流れに世界のトップの企業は反応し、社会的な責任を前面に出し、再生可能エネルギーだけでものを作り出そうとする「RE100」を推し進めている企業も少なくない。
再生可能エネルギーは、どの企業にとっても実は「打ち出の小づち」のようなものだ。よくもとが取れるかどうかの議論になるが、実は、その後のことがしっかり話題にされないことが問題だ。短期間ではもとは取れないが、逆に言えば、いったん、もとを取ると、あとはほぼずっとプラスで推移する「リスクの低い金融商品」と考えてもよい。世界中でますます、この流れは加速していくと考えるべきだ。
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