北陸新幹線「3分の1水没」、なぜ本数確保できた? 当面は支障なくても、年末年始はどうなる

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25日からの暫定ダイヤは、東京―長野間の「あさま」を除けば、ほぼ通常ダイヤに近い本数を確保した。

東京―金沢間を結ぶ列車は最速の「かがやき」が上り・下り各9本(通常10本)、「はくたか」が上り・下り各14本(通常と同じ)。富山―金沢間の「つるぎ」は上り17本(通常18本)・下り18本(通常と同じ)だ。

一方、東京―長野間の「あさま」は上り12本・下り11本(通常はどちらも17本)と減るものの、代わりに「はくたか」の停車駅を増やすことでフォローする。また、東京―高崎間では上越新幹線「とき」が本庄早稲田に臨時停車するほか、臨時「たにがわ」を運行することで、「あさま」の減便により停車本数が減る駅をカバーする。

本来のダイヤと比べると、「はくたか」は停車駅が増えて所要時間が延びるほか、臨時(11月30日以降の運転計画が未定)の「はくたか」は通過駅が1つだけとなっているが、本数については東京―金沢間ではほぼ通常通りを確保している。

「全体の本数は通常の8割」と事前に報じられていたものの、「あさま」を減らす一方で「はくたか」の停車駅を増やして対処しており、利用者に極力影響を及ぼさないための工夫が見られるダイヤだ。

年末年始の繁忙期はどうなるか

ただ、これ以上列車を運行するには使える車両の数が足りず、年末年始の繁忙期の輸送力をどうするかが課題となる。

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これまで通りの本数を確保するには車両を早急に投入することが必要だが、新造する場合は最短でも1年以上かかることが見込まれる。今度の年末年始の帰省シーズンは、需要に応えられない可能性も十分考えられる。

さらに、通常通りの運行のためには浸水した長野新幹線車両センターの施設復旧なども必要だ。

そして、北陸新幹線の施設復旧を進めるとともに、これから課題となってくるのが車両基地の浸水に備えて列車を待避させるなどの対策を考えることだ。

新幹線がさらに安定した交通機関へと進化するためには、今回の被害による教訓を今後に生かすことが重要となってくるだろう。

小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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