大手私鉄に3セク、「台風19号」で鉄道が大打撃 ローカル線、不通長期化なら経営に懸念も

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台風が直撃した関東エリアでも大きな被害があった。

東武鉄道では、佐野線の田島―佐野市間、堀米―吉水間、多田―葛生間(いずれも栃木県佐野市)にかかる秋山川の橋りょうの安全確認のために運転を見合わせている。同市では秋山川の堤防が決壊し、住宅街に大きな被害をもたらした。鉄道の安全確認も水位が下がるまで実施できず、相当の日数がかかる見込みだ。

秋の行楽シーズンを前に痛手なのは、東武沿線有数の観光地である日光・鬼怒川エリアへのアクセス路線である日光線の被災だ。

同線では静和―新大平下(ともに栃木市)間で線路の砕石が流出、北鹿沼―板荷(ともに鹿沼市)間で築堤が崩壊した。現在、同線は栗橋(埼玉県久喜市)―栃木(栃木市)間、新鹿沼(鹿沼市)―下今市(日光市)間で運転を見合わせている。これらの区間ではバス代行が実施されているものの、1時間に1~2台程度という。

日光・鬼怒川方面への特急は運休しており、不通が長期化すれば被災地域の生活の足とともに、観光に及ぼす影響も懸念される。

箱根の登山電車も被害

関東有数の観光地である箱根方面の鉄道も被害を受けた。ロマンスカーの走る小田急電鉄は、渋沢(神奈川県秦野市)―新松田(松田町)間の線路脇で、川の増水により護岸が流出、電化柱が傾いたため、秦野(秦野市)―新松田間が不通となっていた。

急ピッチで修復工事を行った結果、復旧は当初予定より前倒しされ、15日15時ごろに運転を再開した。ロマンスカーは16日始発から通常通り運転する。

一方、ロマンスカーの目的地である箱根の被害は大きい。箱根登山鉄道の箱根湯本―強羅(ともに箱根町)間は、土砂崩れによる橋脚の流出や電柱の倒壊などが発生し、復旧には長期間を要する見込みだ。

箱根湯本―宮ノ下間についてはバスによる振替輸送を実施しているものの、登山鉄道は箱根観光の目玉ともいえる存在だ。箱根では、火山活動に伴い全線運休していたロープウェイが9月中旬に一部区間で運転を再開したばかり。登山鉄道の不通は、観光にさらなる痛手となるおそれもある。

中小私鉄や第3セクター鉄道の場合、台風による施設への被害や不通の長期化は経営にダイレクトに響きかねない。今回の台風19号による災害は激甚災害に指定される見通しだが、経営基盤の厳しい鉄道への支援も必要となるだろう。

小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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