福島県民を苦しめる巨大ゴミ焼却炉の乱立 除染から中間貯蔵へ。福島はまた大きな苦悩に直面

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止まらない綱渡り

うずたかく積み上がっていく除染廃棄物。それを何とか処理しないと福島は前に進めない。運搬のために容積を減らす「減容化」は不可欠だ。しかし、さまざまな技術がある中で環境省は「焼却」に頼る。そこで、比較的低線量だった原発から南西の地域や、60キロメートル以上も離れた山村に突如、巨大な焼却炉建設計画が持ち上がり、各地で住民を戸惑わせている。

県南部の鮫川村では、環境省が1キログラム当たり8000ベクレル超の指定廃棄物を焼却する初の実証施設を建設。住民の反対を押し切って昨年8月に稼働を始めたが、わずか10日後に焼却灰を運び出すコンベヤーの一部が爆発した。

大量の放射性物質が飛散する事態にはならなかったものの、焼却灰の詰まりをなくすためにマニュアルを無視して弁を開放していた人為ミスなどが判明。地元の消防、警察への通報も無視された住民の怒りは収まらない。筆者が複数のプラント技術者らに取材をすると、「設備構造に根本的な問題がある」という声が聞かれた。それでも環境省は「再発防止策をまとめて住民の理解を得て、改修工事も終えた」として1月末、再稼働に向けた確認運転に入った。

こうした強引さは、一つが止まれば全体の流れが滞る複雑な処理計画が背景にある。県や民間レベルでは「バイオマス発電」などとして焼却処理を進める動きもあり、住民の疑心暗鬼が募る悪循環に陥っている。

緻密な検証が不可欠

国が設ける中間貯蔵施設環境保全対策検討会の委員でもある福島大学の渡邊明教授(地球物理学・気象学)は「中間貯蔵施設の議論でも、減容化施設について国はバグフィルターで放射性セシウムの放出を99%抑えられると強調するが、1%の放出でも私の計算では1時間に200万ベクレル以上という膨大な量になる。こうした放射能の収支などを科学的に緻密に検証し、住民に真摯に説明しなければ、福島としてはどんな施設も受け入れられないだろう。ずるずる議論をしていいわけではないが、年度予算に合わせた役人のごり押しのような今のやり方ではいけない」と厳しく指摘する。

中間貯蔵された廃棄物は、30年後に県外で最終処分されることになっている。これは福島だけの問題ではないのである。

週刊東洋経済2014年2月15日〈2月10日発売〉号 核心リポート03)

関口 威人 ジャーナリスト

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せきぐち たけと / Taketo Sekiguchi

中日新聞記者を経て2008年からフリー。名古屋を拠点に地方の目線で環境、防災、科学技術などの諸問題を追い掛けるジャーナリスト。1973年横浜市生まれ、早稲田大学大学院理工学研究科修了。

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