チェーン店が次々撤退!「1人勝ち喫茶店」の真実 「全国チェーンが撤退する街」でも流行る秘密

拡大
縮小

3つ目は「お客さまとの交流」を大切にしていることです。

【3】味とともに「お客さまとの交流」も大切にする

3つ目は、「お客さまとの交流」を大切にしていることです。「黒田珈琲」では、店内で定期的に読書会を開いています。課題本を読んできて、みんなで感想を述べ合うのです。お店のスタッフに、店主の黒田康裕さんが「店を早く閉めて好きなことをやっていいよ」と話したことがきっかけでした。

読書会では、課題本をイメージしたオリジナルドリンクも提供しています。以前、坂口安吾の『桜の森の満開の下』を課題本にしたときには「さくらンベリージュース」というものをつくったりしました。

さくらンベリージュース(撮影:今祥雄)

「黒田珈琲」は年中無休なので、元日も営業しています。だから、黒田さんはこう言います。「いちばん大切なのは、日々のコンディション。お客さまにとって毎日同じであることが大事。だから、体調管理には気を遣っている」。こんなプロ魂と心意気のあるお店にチェーン店がかなうはずがありません。

「コーヒーを飲む」「フードメニューを食べる」だけでなく、人と交流し、語り合い、触れ合うという、「喫茶店本来の姿」がここにはあるのです。

「通行人」はお客さまではない

「人通りは多いけど、単に通過する人たちがほとんど。単なる通行人を消費者として見誤って、失敗している」と黒田さんは言います。

もちろん、大手チェーン店は通行量調査などを行って出店を決めていて、その基準を満たしているから出店してきました。しかし、人通りが多いから繁盛するとは限りません。足早に目の前を通り過ぎる人たちは、お客さまの「予備軍」ではありますが、「お客さま」ではないのです。

通行人をお客さまに変えることができるか。そして、お客さまをファンにすることができるか。大手チェーン店はそこを見誤っていると黒田さんは指摘します。お店に魅力がなければ、提供する商品に価値がなければ、通行人はお客さまにはなりえません。

繁盛店にするには「黒田珈琲」のように、通行人たちが「ちょっと寄っていこうか」と思う「お店に行く理由」をつくり出すことが不可欠なのです。

遠藤 功 シナ・コーポレーション代表取締役

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

えんどう いさお / Isao Endo

早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。三菱電機、複数の外資系戦略コンサルティング会社を経て現職。2005年から2016年まで早稲田大学ビジネススクール教授を務めた。

2020年6月末にローランド・ベルガー日本法人会長を退任。7月より「無所属」の独立コンサルタントとして活動。多くの企業のアドバイザー、経営顧問を務め、次世代リーダー育成の企業研修にも携わっている。良品計画やSOMPOホールディングス等の社外取締役を務める。

『現場力を鍛える』『見える化』『現場論』『生きている会社、死んでいる会社』『戦略コンサルタント 仕事の本質と全技法』(以上、東洋経済新報社)などべストセラー著書多数。

 

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT