「ノーサイド・ゲーム」視聴率では測れない凄み ビジネス度外視の熱さで男心を徹底的に突く

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そんなムードの中、試合中継にまったく絡んでいないTBSが、「ラグビー熱を高め、他局に貢献する」ようなドラマを放送するのは異例中の異例。しかも重要な日本の初戦は9月20日(日本vsロシア)であり、「ノーサイド・ゲーム」が最も盛り上がった時期に行われるのです。

TBSにしてみれば、まさに「敵に塩を送る」というアシストであり、社内での反発は想像にかたくありません。そんなネックを乗り越えて放送しているからこそ、作り手たちの「日本開催のワールドカップを盛り上げよう」「ラグビーというスポーツを応援しよう」というビジネスの枠を越えた熱い思いが伝わってきます。

とかく民放テレビ局は、「海外やネットに目を向けず、業界内で視聴率を奪い合っているだけ」と視野の狭さを揶揄されがちですが、「ノーサイド・ゲーム」の作り手たちは、「自己利益を超えた広い視野がある」といえるのではないでしょうか。

劇的な成果の奥に秘めたメッセージ

ドラマの主なあらすじは、「大手自動車メーカー『トキワ自動車』の幹部候補だった君嶋隼人(大泉洋)は、上司の滝川桂一郎(上川隆也)が先導する企業買収に異を唱えた結果、府中工場の総務部長として左遷されてしまう。失意の君嶋は、不振にあえぎ“会社のお荷物”とまで言われるラグビーチーム『アストロズ』のGMを兼務するよう命じられる。ラグビー未経験の君嶋は、チームの再建とサラリーマンとしての再生をかけた戦いに挑む」というもの。

「不本意な異動」「無茶振りの新たな仕事」という展開は、世間のサラリーマンにも心当たりのあるものであり、序盤から君嶋に感情移入する人の声がネット上にあふれていました。しかし君嶋は、クサることなく一念発起。これまで培ってきたビジネススキルやマーケティングセンスを生かして、チーム強化と集客増に取り組むことで、GM就任1年目から優勝争いに加わり、ガラガラのスタンドを満員にするなどの劇的な成果をもたらしています。

短期間での成果を見て、「それは無理だろう」「都合がよすぎる」などと思われがちですが、当作が伝えたいのはそこではありません。昔ながらの一生懸命や善意にすがるのではなく、「プロフェッショナルのマネジメントがあればチームは強くなるし、ガラガラのスタンドも満員にできる」。

さらに裏を返せば、それをしなければ「選手もファンも減るばかりで、チームは廃部に追い込まれ、ラグビーというスポーツの未来が危うい」という愛情たっぷりのメッセージが込められているのです。

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