遺産相続めぐる「骨肉の争い」はこんなにも醜い お金持ちじゃない家庭でも普通に起こる
しかし民法ではすべての子どもに同等の相続権を認めています。さらに亡くなる直前まで母親は元気だったので、介護の苦労は小さかったはずと、Aさんは思いました。当然Aさんを含む3人のきょうだいは納得できず、長男に対してすべての遺産の開示を求め、何度も話し合いを重ねましたが平行線のままでした。
そこでAさんたちは家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てました。裁判所の調停委員が間に入り、話し合いが持たれましたが、どちらも互いに譲りません。
遺産分割調停が不調に終わると審判という手続きに移り、裁判官が遺産分割方法を指定します。審判では法律的な主張や立証ができないと不利になるので、Aさんたちは高額な費用を払って弁護士に依頼をしました。
長男側も弁護士を雇い、互いが弁護士を通じて主張の応酬を行い、ようやく裁判所が審判を下して遺産分割の方法が決まりました。
その内容は、法定相続分を基本としつつ、長男の介護に伴う寄与分をいくらか認めるものでした。
双方痛み分けのような解決方法となりましたが、結局トラブルが収束するまでに5年の年月が費やされました。
母親が亡くなった時点でAさんは70歳手前、長男は70代後半と高齢で、長年の骨肉の争いによって互いに疲れ切ってしまいました。遺産相続トラブルが解決した後も、Aさんと長男とはいっさい付き合いがなくなりました。
ケース2:遺産相続をきっかけに家を追い出される!
Bさんは長年、母親と同居してきた長男で、妹が1人います。母親が亡くなったら、自宅を引き継ぎ自分が管理していくと考えていました。母親の死後、妹は何も言ってこなかったので、そのまま10年以上そこで暮らしていました。
ところが妹が突然、「法定相続分が2分の1あるから、家の2分の1の権利を渡してほしい」と言ってきたのです。
Bさんは驚き、「母が亡くなって10年以上経っているし、家は私が継いで管理しているので諦めてほしい」と説得を試みましたが聞き入れません。妹は「家を売ってそのお金を半分払え」と要求してきました。
Bさんはすでに80歳手前。今から家を売って別の家に移り住むなど考えられず、妹は何と無茶なことを言うのだろう、常識外れだと思って断りました。すると妹は家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てたのです。
調停委員を挟んで話し合いをしましたが、民法では兄にも妹にも同等の相続権が認められること、妹には実家の半分の相続権があることを指摘されました。
Bさんは今さら遺産分割を求められることに納得ができませんでしたが、民法では遺産分割に期限を設けていません。相続人で遺産分割協議が整っていなければ、10年後でも遺産分割協議ができます。調停では、家に住み続けるには、妹に実家の半額の代償金を払わねばならないと言われました。
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