GDP鈍化で中国の金融緩和は避けられない

当局が頭を悩ます「余剰マネー」の向かう先

これについて、統計の信憑性の問題を持ち出しても仕方がない。政策を運営している関係者が真剣にそう判断しているためだ。

一方、4~6月期のGDP成長率が1~3月期に比べて0.2ポイント低下したのは珍しい事態だと言える。直近では2018年7~9月期にも同じ現象が起きたが、成長率の変動幅は平時ならフラット、やや減速なら0.1ポイント、警戒すべき減速なら0.2ポイント以上、といったメッセージがこの変動幅の変化から読み取れる。

今回の0.2ポイントの減速は輸出比率の高い外資系企業の設備投資や鉱工業生産が冷え込んでいることが原因であり、米中貿易戦争の影響が着実に拡大していることを、如実に物語っていると言えよう。

案の定、7月16日、現地の有力エコノミストである任澤平氏は、「足元の経済成長の中身は数字以上に厳しく、来年に入ってからさらに深刻になる可能性が排除できない」とするレポートを公表。6.2%という成長率を称賛する楽観派と真っ向から対立する姿勢を示した。

「楽観派」エコノミストですら悲観する理由

ほとんどの読者は任澤平というエコノミストが何者か知らないだろう。任氏はもともと政府系シンクタンクに所属するいわゆる官庁エコノミストだったが、その後、証券会社や不動産会社に転身し、証券業界で人気と年収が最も高いエコノミストとして知られている。筆者の印象では、任氏は証券会社のエコノミストらしくイケイケドンドンの「楽観派」だった。

その任氏ですら今回の成長率に対して悲観的な見方を公表した背景には、政策的に「楽観論」より「悲観論」が必要とされているためだと推測できる。例えば、任氏はレポートの中で景気回復の処方箋として市場開放を挙げたが、実際、7月20日から中国政府は新たな市場開放措置や規制緩和策を実施すると発表している。

中国政府が「悲観論」を必要とするのは、財政拡大や金融緩和といった景気刺激策の実施を正当化するためだ。今回のGDP統計発表後、インフラ投資を加速させるために地方政府や大型国有企業による債券発行規模が拡大するだけでなく、貸出金利や預金準備率の引き下げを期待する声が市場関係者から日増しに強まっている。

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