インスタ「投稿よりストーリー」が意味すること 「いいね!」がなくなる日はくるのか

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「フォロワーには、あなたの投稿についた『いいね!』の数ではなく、あなたの投稿自体に目を向けてもらいたいと思っています」。同社がこれをほかの地域でも展開するかどうかはまだわからない。同様に、ツイッターのジャック・ドーシーの考えが、ツイッターの実際のプラットフォームに反映されるのかもわからない。

しかしYouTubeでは、変更は小さなものだが現実に計画されている。フォロワーの数を細かな数字ではなく、概数で表示するのだ。それによって、ユーザーは小さな変動を察知しにくくなる。すると、ユーザーからは厳しい反応が返ってきた。

ユーザーが理解しているSNSは異なる

インスタグラムやツイッターをここ数年のあいだ日々使ってきたユーザーは、数値は重要でないとは言わないが、少なくとも少し価値が下がり、数値どうしの関連性が薄れ、現実からも離れているという印象を受けている。プラットフォーム上で力や影響力を発揮して報酬を得るのは、主にインフルエンサーなどの第三者であり、そうした力が示されるのは、例えば政治などの世界だ。

一方でYouTubeでは、チャンネルの登録者数や動画の視聴回数が、YouTubeから得られる収入に直接的に影響する。同社の発表には数百人が反応してコメントを書いたが、その中の1人はこう述べた。「誰もこんなことを望んでいない。チャンネル登録者数を公開しているユーザーは、最後の1ケタまで数字を見せたいのだ」。

別のユーザーが理由を説明する。「ユーザーはサイト内のさまざまな問題を指摘してきた。YouTubeは登録者数を概数にするよりも、それらの問題を解決するのに時間を使うべきではないか。登録者数を概数にしたら、事業機会の損失にもつながりかねない」。また別のユーザーは「なぜYouTubeは動画のクリエーターをそれほどまでに嫌うのか」と問う。

これらの反応は、YouTubeやソーシャルメディアについてのユーザーの理解を反映している。彼らが理解するソーシャルメディアは、商品とカネがあり、勝者と敗者がいて、非常に強力だが説明責任を負わない企業によって支配されている市場なのだ。

数値はお金を意味し、その数値を知ることは、秘密によって支配されている環境で、貴重な知識と主導権を手に入れることだ。ユーザーにとって、数値は力だ。だからプラットフォームはそれを隠そうとしている。

(執筆:John Herrman、翻訳:東方雅美)
© 2019 New York Times News Service

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