盛り上がり欠く参院選、投票率50%割れも 優勢・与党の心配は政権幹部の失言と暴言

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各党が神経をとがらせるのが投票率だ。2016年は54.70%、2013年は52.61%で、過去最低は1995年の44.52%。今回は主要メディアの調査などから投票率の50%割れも予測されている。確かに選挙戦が全般的に盛り上がりに欠けているのは事実。民放テレビの情報番組などでも、選挙を大きく取り上げる回数は少なく、「党首奮戦記や注目選挙区の戦いなど平板な報道ばかり」(選挙アナリスト)で、「現状では投票率低下は避けられない」(同)との見方が広がっている。

情勢予測では自民、公明、共産各党の堅調さが目立つが、「投票率が低いと、強い組織を持つ政党が相対的に有利になる」(同)からで、逆に風頼りと揶揄される立憲民主や国民民主は苦戦を強いられるというわけだ。自民党内からは「内閣支持率も堅調で、有権者は政権の安定を求めている」(幹部)との声も出るが、「国民の政治への無関心が与党優勢の原因」(選挙関係者)との見方も少なくない。

自民全議員に「余計なことは言うな」指令

6月末に大阪で開催された主要20カ国・地域(G20)首脳会合と、その前後の米中、米朝首脳会談などが国際的にも大きな反響を呼び、日本のメディアもその間は国内政局をほとんど報道しなかった。外交の大舞台で議長役を務めた安倍首相の存在感ばかりが際立ち、野党党首の政権批判の声もかき消された。首相サイドは「安倍流のしたたかな政治日程設定が図に当たった」(側近)とほくそ笑む。

ただ、優勢とされる与党にも心配の種はなお残る。6月に急浮上した老後資金2000万円不足問題に加え、安倍首相が売り物とする外交でも日ロ交渉が暗礁に乗り上げるなど、政権にとっての不都合な真実が野党の攻撃材料になっているからだ。それ以上に安倍首相らが神経をとがらすのは、政権幹部の不用意な失言や暴言だ。自民党本部は党幹部や閣僚も含む衆参全議員に対し、「演説などで余計なことは言うな」との指示を繰り返している。   

安倍首相自身も、2年前の東京都議選の最終盤に、聴衆の激しいやじなどにいらだって「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と叫び、自民惨敗の要因をつくった前科がある。それだけに、今回はひたすら「政治の安定」を繰り返し、お得意の「悪夢の民主党政権」というフレーズも封印している。

そうした中、行く先々で聴衆の拍手と歓声につつまれているのがれいわ新選組だ。インターネットを駆使してすでに2億5000万円を超える選挙資金を集めている。山本氏を筆頭とする各候補の特異なキャラクターも注目の的で、全国各地にれいわ勝手連も出現している。

安倍首相や枝野氏の街頭演説も素通りする有権者が多く、動員もなく多数の聴衆を集めるのは山本氏だけ。演説の際の聴衆とのやり取りでもヒートアップする場面が相次ぎ、「選挙戦での党首力では山本氏がダントツ」(選挙アナリスト)。ただ、主要メディアは選挙報道でれいわ新選組の活動をほとんど取り上げず、「公平、公正な選挙報道という規制が障害になっている」(民放テレビ幹部)。

それでも、ネット空間では「山本氏とれいわへの注目度は抜群」(関係者)だ。自らの当選を度外視する形で、今回新設された比例代表の特定枠にALS患者らを立てる山本氏の戦術も、有権者の判官びいきの感情をかき立てている。ただ、反安倍陣営で山本氏の言動だけが注目を浴びていること自体、多弱野党の不甲斐なさを浮き彫りにしている。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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