「KIMONO問題」起こしたお騒がせセレブの正体 渦中の女性「キム・カーダシアン」とは何者か

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アメリカでは、大物の俳優や女優は、ディオールやシャネルなどのミューズに選ばれるとかは別として、基本的にコマーシャルに関わらないものだが、彼女の場合はなんでも歓迎。

イギリスのコメディアン、リッキー・ジャーヴェイスは、カーダシアンをケイト・ミドルトンと比較し、「もっとうるさくて、下品で、ちょっと酔っ払っていて、簡単に金で買える」と言ったが、それはまさに言い得ている。

いくら非難されても、彼女は気にしない。その精神的強さは、家族全員が持つもので、この家族の伝統とも言えるのだ。

キム・カーダシアンとお騒がせ一家

例えば彼女の血のつながった父は、1994年のニコール・ブラウン殺人事件で、ブラウンの元夫O・J・シンプソンの弁護士を務めたロバート・カーダシアンである。

世間がみんなクロだと思っていたシンプソンを、彼を含む弁護士チームは、見事、無罪に持ち込んだ。彼自身も、シンプソンが無実だと完全に信じてはいないことを後に認めているが、1ミリくらいはあったかもしれない正義感はすっぱり捨て、アメリカ中が見守る、まさに世紀のリアリティー番組とも言える場で、スターの1人を演じてみせたのである。

一方、血のつながらない父(母クリスの再婚相手)は、1976年のモントリオールオリンピックに、男子陸上選手として出場したブルース・ジェンナーだ。彼は2015年、トランスジェンダーだとカミングアウトし、ケイトリン・ジェンナーと改名している。

その後は、ロングヘアにメイク、肌を露出した姿で雑誌『Vanity Fair』の表紙を飾ったり、女性として堂々と生きる新しい毎日を描くリアリティー番組「女性になったカーダシアン家のパパ」を始めたりするなど、非常にプライベートであるはずのことを積極的にビジネスに結びつけ、注目度を上げた。

姉や妹たちもまた、ソーシャルメディアやゴシップの常連だ。そうやって、家族体制で途切れることなく話題を提供してきたからこそ、15年ほど前にはもっと有名だったパリス・ヒルトンや、ずっと才能のあるリンジー・ローハンよりも、長く生き延びることができたのである。

この「KIMONO」プロジェクトだって、商品が1つ売れるより前に、もう役目を果たしてくれた。来年の今頃、この下着ブランドの話をしている人は、おそらく誰もいないと思われる。だが、それならそれでもいいのだ。

すでに彼女の頭の中では、きっと、次に何をやれば騒いでもらえるか、数々のアイデアが渦巻いているはず。そしてアメリカは、またこいつかと言いつつも、適当に相手にしてくれることだろう。

猿渡 由紀 L.A.在住映画ジャーナリスト

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さるわたり ゆき / Yuki Saruwatari

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『バイラ』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

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