仕事相手を「怒らせてしまった」ときの処方箋 「怒りをなだめる」のは逆効果でしかない

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相手を怒らせていないかと不安になってしまうのは、日本人独自の文化的背景が関係しています(写真:Audtakorn/PIXTA)
臨床に携わる一方、TVやラジオ番組でのコメンテーターや映画評論、漫画分析など、さまざまな分野で活躍する精神科医・名越康文氏による連載「一生折れないビジネスメンタルのつくり方」。エンターテインメントコンテンツのポータルサイト「アルファポリス」とのコラボにより一部をお届けする。

「相手を怒らせてしまわないか」という恐怖心や不安が、仕事の成果を妨げてしまうということはよくあります。

「このまま相手の感情がこじれて、交渉が決裂したらどうしよう」という不安のために、不利な条件で契約してしまった。あるいは、上司の説明がよく理解できなかったのに、「あまりしつこく確認して、上司の機嫌を損ねてしまったらどうしよう」と考えて確認を怠り、後になって大きな問題になってしまった、などなど。

アルファポリスビジネス(運営:アルファポリス)の提供記事です

誰しも、似たような経験があるのではないでしょうか。本当だったら、相手を怒らせてしまうかもしれないリスクがあったとしても、ギリギリのところまで1歩踏み込んで交渉したり、よく話し合って条件をすり合わせたりしたほうがいいのに、「相手を怒らせたらどうしよう」という不安が先に立ってしまい、うやむやにしてしまう。

こうした、仕事の内実よりも、相手との情緒的なやりとりに重きを置く傾向は、日本人独特の文化的背景があると私は考えています。

相手の気持ちを「推し量る」のが日本文化

打ち合わせの途中で相手の表情が曇ったり、こちらの問いかけに相手が腕組みをして沈黙したりすると、私たちはほとんど自動的に相手の感情を推し量ろうとします。「知らないうちに、自分が空気を読まない言動をしてしまったのではないか」「相手の気に障ることを口にしてしまったのではないか」と相手の感情の動きを想像して、不安が頭をもたげます。

これは、私たち日本人にとってはかなり一般的なコミュニケーションのあり方ですが、おそらく、欧米のビジネスマンの視線から見れば、奇妙なものに映ることでしょう。というのも、打ち合わせの目的は「条件交渉」であって、相手と情緒的に「仲良くする」ことではないからです。

昔、病院の勤務医をしていた頃、そういう日本的コミュニケーションを十分に理解していなかった僕は、製薬会社のMR(医薬情報担当者)さんがなぜ、毎日のように医局に通ってきて、インスタントコーヒーを差し入れておられるのかが不思議で仕方ありませんでした。「この人はいったい、何をしにきているのだろう? そんなにコーヒーが好きなのかな?」と思っていたのです(笑)。

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