「ファーウェイ禁輸」でなぜ台湾企業は笑うのか 中国から台湾へ受注シフトでメーカーに明暗

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パソコンやスマホを製造する台湾企業からは「チャンス到来」との声も出る。

ASUSブランドを展開する台湾のパソコン・スマホ大手、華碩電脳は5月27日に同社の設立30周年を記念したパソコンやスマホの新製品を発表した。同社の幹部は「30周年という節目の時にファーウェイ問題が起きた。少しはZenFone(ゼンフォン、同社が展開するスマホシリーズ)にシェアが流れることを期待している」と話し、「(ファーウェイへの)規制がうれしくないとは言えない」と本音を漏らした。

タッチパネル大手のGISは韓国のスマホ大手、サムスン向けに供給しているパネルの増産に踏み切った。背景にはサムスンがファーウェイからスマホシェアを奪えるとの思惑がある。地元メディアによると、GIS社の周賢穎董事長は「(貿易摩擦の影響で)近いうちに中国系の競合他社は債務危機に陥る」と示唆した。

台湾企業にとって米中摩擦は追い風に

通信やネットワーク機器を製造するメーカーは、アメリカからの受注が中国から台湾に流れ始めていると明かす。コンピュータ周辺機器を手がける台湾の宏正自動科技(ATEN)のブース担当者は「中国へのさらなる制裁を懸念してかアメリカからの問い合わせは明らかに増えている」と話す。

鴻海の郭台銘氏は総統選に出馬するため、経営への関与が薄まっている(記者撮影)

その一方、ファーウェイ製品の規制に困惑する企業も多い。日本の電機大手シャープの親会社でアップルからiPhoneの受託製造を担う鴻海精密工業もその1つだ。同社は、日本で販売中止が相次いでいるファーウェイの最新スマホ「P30」を一部受注したとされる。台湾総統選の予備選に出馬中の鴻海の郭台銘董事長はメディアに対して「従業員は臨戦状態についた」と語り、鴻海社内の危機意識は高まっていると明かした。

鴻海の中堅社員は「ファーウェイ向けの受注は全体として大きくはない。ただ、中国で製造しているiPhoneの生産台数は25%の高い関税の影響を受けることは必至。ファーウェイが落ち込んでiPhoneの販売数が増えればいいが…」と同社の微妙な立場を説明する。

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