鴻海の郭氏、「台湾総統選」出馬が起こす大波紋

鴻海出資のシャープの経営はどうなるのか

郭氏出馬に伴い、シャープの経営面への影響も否定できない。2016年にシャープに出資後、鴻海出身の戴正呉会長兼社長は郭氏の理念を迅速に実行に移してきた。シャープの2018年3月期は702億円の最終黒字となり、10年ぶりの黒字転換に成功した。

シャープ再生の背景にあるのは、鴻海の材料調達力や生産力を活用することができたからだ。2017年からは、郭氏のかけ声で100万人を超える鴻海グループの従業員がシャープのテレビを安値で大拡販する「天虎計画(Sky Tiger Project)」が立ち上がった。ECなどを展開する鴻海グループ傘下「富連網」に対するシャープの販売額は、約600億円近くに上った(プロジェクトは2018年半ばに終了)。

シャープと中国を郭氏が橋渡し

さらに、郭氏の人脈も大きい。4月9日の夜、シャープ東京支社で急きょ、中国・広東省の馬興瑞省長ら高官との会談が開催された。シャープの戴氏は高官たちの乗った大型バスが到着するや、バスの前まで駆けつけて満面の笑みで出迎え、社内で和食をふるまいつつ、シャープ肝いりの8Kテレビや有機ELディスプレイなどを3時間にわたって披露した。

郭氏もその場に同席していた。広東省は鴻海の中国工場が集中するエリアで、共産党の高官でもある馬氏と郭氏は懇ろの仲だ。会談の成果はまだ不明だが、郭氏がシャープと省政府との橋渡し役になったと考えるのが妥当だろう。関係者は「鴻海はグループ内でもシャープの経営の独立性を重視しているし、事業上も補完関係にあるため、経営への直接の影響はないだろう。もっとも、政界進出にあたって戴氏を引き抜かれたら大変だ」と語る。

仮に郭氏が台湾総統に選ばれた場合、鴻海やシャープの経営にとってマイナス材料となることは間違いない。そのマイナス面を乗り越えてまで出馬する意味があるのか。郭氏の出馬の「真意」が問われている。

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