日経平均株価の「異常な値動き」に注意が必要だ 外需株も内需株も買えるような状況ではない
こうしたなか注目されるのは、東証1部全体の株価動向を的確に表すTOPIXという株価指標に対しての、日経平均株価の動きの「異常さ」だ。TOPIXとの比較だけではない。足元は、東証2部指数、ジャスダック平均、マザーズ指数と、弱含み展開だ。つまり、日経平均「ばかりが」上振れしている。結果としてNT倍率(日経平均÷TOPIX)は、最近では3月26日(火)をボトムに、上昇傾向をたどっている、
日経平均ばかりが上がっているのは、日経平均先物に海外短期筋の買いが入ったためと推察される。これだけ日本の経済・企業収益環境の先行きが暗いなかで、海外短期筋が何を喜んで株価指数先物を買っているのかはわからないが、邪推すれば、「正しく」株価の先行きに警戒的になる投資家が多いため、買い煽ればかえって株価の上振れに意外感が生じ、「狼狽買い」を引き起こすことができると考えているのかもしれない。
特に前週末(4月12日、金)は、値がさ株であり日経平均の数値に与える影響が大きいファーストリテイリングの株価が大幅に上振れし、それが日経平均の上昇に寄与した。そのことから、その株価指数上振れに乗じた海外短期筋の先物買いも嵩んだと推察される。
同社の買い材料とされたのは、前日の4月11日(木)に発表された半期決算(2018年9月~2019年2月)において、連結決算の純利益が前年比9%の増益となり、過去最高益を更新したことだった。しかしその中身を見ると、中国部門が収益の支えとなっているものの、国内のユニクロ事業は減収減益で、他の小売株に物色が広がるような内容ではない。加えて、国内事業の不振から、同社は2019年8月期通期の営業利益見通しを下方修正している。つまり、週末の日経平均の上振れは、同社の株価の動きに乗じた海外短期筋の先物買いという、刹那的な「あだ花」に過ぎない可能性が高い。
それでも、週明け15日(月)は、先週末の米国株価の上昇や円安気味の動きに乗じて、投機筋が日経平均を2万2000円超えに押し上げようとの仕掛けが、先週末のシカゴ市場の流れを引き継いで、持続する展開があるだろう。しかし、今後も実態悪に則して「正しく」現物株を買わない最終投資家の動きが根強く続けば、海外短期筋が上値の重さから、先物買いを投げ売る動きに転じることもありそうだ。そうなれば、NT倍率が低下する形で、TOPIXも下落するが日経平均の下げが一段と大幅になる局面が生じるのではないだろうか。
米中両国だけをみていると足元をすくわれる?
内外市場では、国際通商問題に関しては、米中ばかりを注目してきた。しかし、日米間でも15日(月)からの貿易協定交渉の開始など、アメリカからの圧力が日本にもかかってくることが想定される。特に為替相場については、スティーブン・ムニューシン財務長官が13日(土)に、「為替も議題となり、協定には通貨切り下げを自制する為替条項を含めることになる」と述べたと報じられている。日本側には、「今のところ日本は意図的に円相場を切り下げるような行為は何もしていないのだから、為替条項が含まれても全く心配することはない」という楽観論が主流なようだ。
だが、アメリカが「日銀が大幅な緩和を続けていることが意図的な円相場の切り下げ行為だ」と主張してくるのではないかと、市場が懸念して円高に走ることも否定はできない(筆者は、実際にはアメリカ側がそこまで言ってくることはないと思うが)。
不確定要素があるなか、しばしば投機筋が支配する相場の状況においては「日経平均先物を押し上げて、為替相場は円安に持っていくことに、すでに決めている」と、力づくで市況を短期的に動かしてしまう、ということはよく起こる。こうした、実態とは逆方向の市場動向が、少なくとも今週初は続き、日経平均が一時的に2万2000円台で上値を目指す動きが出る可能性はある。とは言っても、内外の実態悪に変わりはなく、従来からの年央の日経平均1万6000円シナリオは変更しない。今週の日経平均株価は、週初は「無理やりな上値探り」が残るがそのうち失速すると考え、2万1500円~2万2100円を予想する。
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