改めて問われる上場メリット--LEOCよ、お前もか。上場廃止が相次ぐ給食業界
今回のLEOC上場廃止について、メディカル給食最大手の日清医療食品・村田清和社長はこう語る。
「業界としては社会的認知がなくなるというのは残念。が、当社としては上場廃止はまったく考えていない」
医療施設、介護・福祉施設等の入院患者や入所者に食事サービスを行うメディカル給食協会が、厚生労働省の公益法人として認可を受けたのが89年1月。当初会員数は82だったが、昨年3月末で196まで増加した。それと連動して、登録受託施設数は現在、当初の10倍以上に急増している。
これは病院、介護、特別養護老人施設などで外注化率が高まっている(右下図)のも一因である。「昨年9月末の外注化率は60%。今後特養ホームは年300~350施設程度増える」(日清医療食品・織田和彦常務・総務本部長)見通しである。
その昨年9月の市場シェアを示したのが下図。最大手の日清医療食品が連結ベースでほぼ4分の1を占め、非上場の富士産業が続き、上位6社(前記のようにエームサービスとメフォスは一体)で過半のシェアを握る。日清医療食品では今後介護福祉施設、保育所などを中心にマーケットは拡大し、2010年度には07年度に比べ5・4%程度市場は拡大すると予測している。
汚染米事件の打撃は? 株価動向も頭痛のタネ
しかし昨年、日清医療食品は今後の市場拡大に暗雲をもたらす事件に遭遇した。同社近畿支店で起きた汚染米混入事件である。
昨年5月から9月にかけて、堺市の大和商会から汚染米とは知らずに約734キログラムを購入、近畿2府4県の118件の病院、老人施設等に赤飯、おこわ、おはぎ等に調理し提供した。そのもち米は1キログラムずつパックされ、「アメリカ産もち米100%」と表記されており、三笠フーズの非食用米とはまったく認知していなかったという。
事件が発覚した翌10月、同社では事故再発防止へ商品統括部に食品管理課を新設、「今後の商品や仕入れ先の選定などの対応を進め、検査体制をしっかりする」(織田常務)ことを明言した。このほか、中国産食品のメラミン混入事件も頭が痛い問題だ。給食の契約の更新はこの1月末からで、汚染米事件の影響がどれほどになるかは、今後の推移を見守るしかない。
上場する同社にとって、さらに頭痛のタネがある。株式市場の動向だ。
同社では退職給付制度として確定給付型企業年金を採用しているが、その運用利率は毎決算期末の日経平均に連動しているため、現在の株価水準では「利回りがマイナス24%程度になるおそれ(昨年3月末の日経平均は1万2500円台)」(織田常務)が強い。それにより、今09年3月期は大幅な営業減益の懸念が出ている。同社の場合、その運用損を発生期に一括処理している点も響く。
もう一つの上場企業シダックス。昨年大新東を子会社化した後、新店や改装計画を圧縮、財務改善を進める姿勢を見せている。同業他社には「シダックスは今やレストランカラオケなどが主体。給食にはあまりウエートを置いていないのでは」との見方が多い。ちなみに同社の08年9月中間期では、メディカル給食事業は1000万円の営業赤字である。
東証上場企業数は昨年2年連続で減少した。昨年の上場廃止は147社、これに新年はLEOCも続く。給食業界がその象徴なのである。
(宇田川日出雄 =週刊東洋経済)
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