企業に「eスポーツ枠」で採用される利点は何か プロチームへの「協賛」とは何が違うのか

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「企業スポーツの選手である社員は、基本的に一般社員と立場は同じで、練習も仕事としての業務とし、通常業務と両立して行うことが前提にされています。練習場などの設備に関してもほかの部署の設備と同様に扱われ、必要に応じて環境の改善が行われます」(松岡氏)

試合や大会などの遠征があった場合は、基本的に出張扱いとなるとのこと。つまり、兼業の場合は有給を使って自費で遠征に行くところを、会社から渡航費滞在費が出て、試合は仕事として扱われるわけです。

プロ選手を引退した場合や、入社に関することも聞いてきました。

「企業スポーツの選手を採用する選手枠は一定数設けております。選手を引退したあとは、社業に専念していただきます」(松岡氏)

企業スポーツでの活躍が見込める人材であれば、それだけで入社の基準をクリアしていることになり、また、どの形で入社してもそのまま会社に残れるというわけです。

スポンサー契約とチーム運営の違い

パナソニックはガンバ大阪などプロチームへのスポンサーもしており、企業スポーツとの違いも語っていただきました。

「プロチームへのスポンサーと企業スポーツのチーム運営は目的や意義が異なります。企業スポーツチーム運営は、ブランドの向上、社内一体感の醸成、事業貢献、社会貢献などになります。かたやプロチームへのスポンサーは、ブランドの向上が主要となります」(松岡氏)

これらの話を踏まえて考えると、eスポーツが企業スポーツとして成立すれば、安定した収入を得て、大会遠征の渡航費滞在費が出て、出張扱いとなる。企業としては、その見返りとして選手が活躍することでブランドイメージが上がればよいということになるわけです。そう考えるとeスポーツの実業団化は十分に可能なのではないでしょうか。

実際、eスポーツを企業スポーツとして始めている企業もあります。その1つがデジタルハーツです。

デジタルハーツは、ゲームのデバッグ(ゲームの進行に不具合が出るプログラムのバグを探す仕事)を行っている会社です。その事業内容から、会社内にはゲームを四六時中動かしているデバッガーが登録されており、その数は8000人を超えるといいます。当然、ゲームのプレーに長けている人たちで、その中からeスポーツの選手として活動する人が出てきたわけです。

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