福島県川俣町民ら137人が東電を提訴 「地域を台無しにした」加害者責任を追及
原告弁護団で事務局次長を務める高橋右京弁護士によれば、今回の提訴では、①避難生活に伴う慰謝料、②居住用不動産および家財道具の損害賠償、そして、③ふるさと喪失による慰謝料などを求めていくとしている。すでに同様の趣旨で福島地裁いわき支部に提訴した221人(82世帯)と合わせると、避難者で構成される原告は358人(117世帯)に上る。これとは別に、避難指示対象外のいわき市民を中心とした原告が1315人に達している。
「訴訟を通じて、東電の加害者責任を追及していくほか、被害者の人権回復や『原発公害』の根絶を求めていく」(菅野さん)。
提訴と同じ12月26日付けで、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会は、新たな賠償の枠組みとなる「中間指針第4次追補」を決定した。しかし、原告の一人で会社員の大内尚久さん(48)は「国が決めた賠償の仕組みでは生活の再建は困難だ」と語る。
「築55年の自宅はかびや湿気もひどく、ねずみの被害も大きいことから、戻って生活するのは困難。かといって、現在の仕組みでは、ほかの場所で住宅を再建するほどの賠償を得られるとは思えない」と大内さんは続ける。
「ふるさと喪失」の責任を問う
前出の紛争審査会の試算によれば、1975年築の住宅に対する損害賠償額(4人世帯)は1342万円。加えて県内の都市部に移住した場合に、より多くかかる住宅価格との差を埋め合わせるための賠償額が1462万円で、合計2800万円余りになるとしている。
従来の賠償スキームから一定の前進があったことは確かだが、全国平均額での住宅費の試算を元に3600万円余りの住宅損害の賠償を求める原告の主張とは開きがあるうえ、原告が要求する「ふるさと喪失による慰謝料」を紛争審査会は認めていない。というのも、山木屋地区の大部分は、早期に帰還が可能だとされる「避難指示解除準備区域」に区分けされているからだ。
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