「お客様は神様」がドイツ人にはありえない理由 客の要望よりも優先すべきは「店のルール」だ
しかもドイツでは、サービスはタダではなく有料である。店員やタクシー運転手、理髪店、ホテルの部屋の掃除人、購入した家具を自宅まで運んでくれた運送業者などにはチップを払わなくてはならない。チップは料金のほぼ10%が目安だが、チップのない国から来た日本人の中には「この悪いサービスでチップまで払うのか……」と思う人も多いだろう。私は「あまりにひどいサービスだ」と思ったときには、チップを払わない。
従業員が足りないと言えば、「メディア・マルクト」や「ザトゥルン・ハンザ」などの家電量販店もそうだ。日本ならばヤマダ電機やヨドバシカメラに相当する大規模な店だ。こうした店では、コンピューターやプリンター、関連部品などの品ぞろえがよく、割安の値段で売られている。店が郊外にあることが多いので、駐車場も完備している。このため、コンピューターが突然壊れたときなどには、ここに足を向けることになる。
だが、売り場の面積が大きく、商品を探すのに一苦労する。しかも、人件費を節約するために従業員の数を少なくしている。このため客は目指す商品があるかどうかなどを尋ねるためには、広い売り場の中でまず店員を探して歩かなくてはならない。商品が安いのはいいことだが、客にとっては疲れる作業だ。
ドイツ人が驚く「日本のサービス」
日本にときどき旅行するドイツ人の友人は、「日本の店ではドイツと違って店員の数が多いので、客が店員を探し回らずに済む。これは便利ですね」と語っていた。確かに日本のデパートなどに行くと、店員の数が多いと感じる。東京の地下鉄の駅では、改札の近くにたいてい駅員が座っているので質問しやすい。ドイツでは地下鉄の駅などでは駅員をほとんど見かけない。
日本のあるデパートでは、地下駐車場の車の出口に2人の誘導係を配置して、買い物を終えた客が車で道に出やすいようにするサービスを行っていた。1人が通行人を制止し、もう1人がほかの車を止め、腕を回して買い物客の車に「路上に出てください」という合図をする。ドイツのデパートの駐車場の出口で、こんなサービスを見たことは一度もない。ドイツでは買い物客も通行人も自己責任で道を使っているからだ。
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