日本株があまり下落しないと読む「4つの理由」 今年の株価が上がるかどうかは3月で決まる?

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「新たな」と言うのは、昨年クリスマスの急落で、株価は米中対立の長期化、英ブレグジットのこじれ、イタリアの財政問題、独仏の政局、新興国不安等を、最悪の想定で織り込んだ。その中には米欧日の景気減速懸念もあったのだが、「日本の『景気後退期入り』」までは織り込んではいなかったからだ。

これに対して菅義偉官房長官は「景気動向指数は各経済指標をそのまま指数化するため、景気の基調とは分けて考えてもよいもので、景気の回復基調という判断に変わりはない」と述べている。その後、安倍晋三首相、麻生太郎財務相も景気後退を否定した。

一方、民間のシンクタンクでは「過去の例を見ると、実際には景気がすでに後退局面に入った可能性が高い」と分析しているところもある。これまでも内閣府の景気動向指数は、政府の正式な景気判断とは異なるケースもあり、今回どうなるか、また大きな不透明感が増えた感じだ。

株価の深押しがないと考える4つの理由

だが、筆者は株価の深押しはないと考える。理由は以下の4つだ。①先週6日(水)OECD(経済協力開発機構)が発表した日米実質成長率予測によると、日本は2019年0.8%と前回の1.0%から下方修正されているが、2020年は0.7%に低下するものの、前回予想と変わらず、低調ではあるが、日本が景気後退に陥るとは予測されていない。またアメリカにおいては2019年2.6%と前回の2.7%から下方修正されたが、2020年は2.2%に低下するものの前回の2.1%から上方修正されている。

②企業業績から見て、景気後退の姿ではない。2018年度の最終利益の減益は確定的だが、経常利益は増益基調を守っている。先に発表された法人企業統計の経常利益の推移は、1-12月で見れば2015年70兆8004億円、2016年71兆8854億円と、厳しかった時期でも伸び、2017年は81兆3552億円と、アメリカの減税の「ボーナス」で伸び過ぎだった。それでも2018年は84兆3273億円と増益を確保、再度の政策の出る2019年も経常増益が十分考えられる。

理由③今回の景気後退懸念で、日銀の金融政策が一変するだろう。長期間となった異次元緩和政策に対して最近副作用論議が高まっていたが、その議論は一掃され、追加緩和論がそれに置き換わるだろう。この週末の金融決定会合結果発表と黒田東彦総裁の会見が期待される。理由④昨年のクリスマス前後の急落が、もし日本の景気後退を織り込んだものだとしたら、ショックはかなり緩和される。

また、2008年の景気後退期は13カ月、2012年のそれはアベノミクスの登場もあって8カ月で終わっている。今回の「景気後退」(決まったわけではないが)は。柔軟さを増している世界の政策を考えると、後退になったとしても期間はさらに短期化しよう。だとしたら、その先を考える株の先見性から、下値は乏しいということになる。また、今年1年間を考える時、今3月の相場は非常に重要だ。日経平均は4年ぶりに1月、2月と高くなったが、もし3月もプラスになると、過去15回の年間騰落の勝敗は何と14勝1敗(大和証券レポート)。これは面白い3月相場になって来た。こうしたことを総合的に勘案、今週の予想レンジは2万0700円~2万1600円とする。

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

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ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

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