日産「ジューク」いまだに根強い人気を誇る理由 発売から8年余り、次期車の姿はどうなるか

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そうした中、市場はいまコンパクトSUVへの人気が高まっている。ジュークより寸法がやや大きくなるが、ホンダ・ヴェゼルもコンパクトSUVに分類される1台だ。その人気ぶりを見て、トヨタからC-HRが誕生した。海外からは、ボルボXC40が現れ、BMW・X2も発売されている。

C-HRとヴェゼルは、2018年の年間販売台数で日本自動車販売協会連合会の乗用車ブランド通称名別順位で12位と14位に位置し、高い人気を保っている。XC40は、世界的な人気によって日本に輸入できる台数に制約があることもあるが、現在なお注文から納車まで9カ月近い待ち時間を要するほどだ。

これらコンパクトSUVのうち、ヴェゼルは比較的普遍的な外観ではあるが、それでも車体後半をクーペのような造形として、見栄えのよさを重視している。C-HRに至っては、まずその顔つきが独創的であるばかりか、後方視界をやや犠牲にしながらも車体後半のクーペのような造形にこだわっている。

小さくても刺激的なSUV

XC40は、より大柄なXC60やXC90と比べ明らかに表情の異なる造形とすることにより、車格の上下ではなく暮らしの嗜好にあった最適な1台としての価値を訴える。室内の使い勝手においては、あたかも日本の軽自動車のように物入れが豊富で、また、四畳半のこたつに入ったままあらゆる物に手が届くといった使い勝手が施されている。

X2は、やや武骨な造形をあえて外観に与え、駆けぬける歓びをブランドメッセージとするBMWらしからぬ姿とする一方、クルマに乗り込むとBMWならではの運転者中心のつくりで運転に集中させる共通性を覚えさせられる。

各車、それぞれ独創的な個性を表現しながら、小さくても刺激的なSUVという共通した価値を商品力にしている。この手法もやはり、ジュークが切り拓いた商品性といえるのではないだろうか。

過去、小柄なクルマは実用性重視で、経済的であることが価値として歓迎された。一方で、豊かさやゆとりはクルマの寸法を大きくしていくことにより実現されてきた。だが今、社会は一変している。

世界人口は今や75億人に達し、19世紀末からの100年余りで4.7倍も増加した。その結果、都市は肥大化し、人口密度が高まり、交通渋滞が世界共通の課題となり、大気汚染が押し寄せている。大きいことをゆとりと捉えられない時代になってきている。それでも人は暮らしに充足を求める。そこで、小さくても心を満たしてくれるものを求めているのである。

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