JR東の「羽田空港アクセス線」計画、ついに始動 5~6月に環境影響評価着手、開業は10年後

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羽田空港アクセス線計画は、2014年夏に開かれた国交省の交通政策審議会でJR東日本が表明。同審議会が2016年に国交相に答申した今後の東京圏の鉄道整備指針には「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」の1つとして位置付けられ、「事業計画の検討の深度化を図るべき」とされた。

同社は昨年7月に発表したグループ経営ビジョン「変革2027」で、羽田空港アクセス線構想の推進を表明。深澤祐二社長は「今年度中にスキームをはっきりさせたい」と、早期の開業に意欲を示していた。

都内で羽田アクセス線構想について説明するJR東日本の深澤社長(編集部撮影)

東京都は2018年度、都内の鉄道新線計画6路線の事業化を見据えた準備基金を設置しており、羽田空港アクセス線はこの中に含まれている。6路線に優先順位はないが、都の関係者は「(羽田空港アクセス線は)広域的な利益は大きいと考えている」と話す。

羽田空港アクセス線のメリットは利便性が多方面に広がることだ。東山手ルートは宇都宮・高崎線や常磐線方面と結ばれるほか、西山手ルートは埼京線の池袋方面へ、臨海部ルートはりんかい線経由で房総方面への直通運転が可能となる。

ほかにもある空港アクセス線構想

交通政策審議会の答申はさらに、「久喜駅での東武伊勢崎線と東北本線の相互直通運転化等の工夫により、さらに広域からの空港アクセス利便性の向上に資する取り組みについても検討が行われることを期待」との意見も付け加えている。

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東山手ルートが開業するだけでも首都圏各地と羽田空港を結ぶ列車の運行が可能になり、東北新幹線沿線など北関東方面などからの空港アクセスの利便性は大きく高まりそうだ。

一方、JR東日本グループで現在の羽田空港アクセスを担っている東京モノレールへの影響は避けられない。空港バスや京急電鉄など、ほかの羽田空港アクセス交通にも一定の影響が出るのは確実だろう。

羽田アクセス鉄道をめぐっては、ほかに東急線の蒲田駅と京急線の蒲田駅を結び、京急空港線乗り換えで羽田空港へのアクセスを改善する「新空港線」(蒲蒲線)の計画もあり、JRの羽田空港アクセス線とともに都が事業化に向けて設置した基金の対象となっている。

同線は東急東横線に乗り入れ、東京メトロ副都心線を通じて東武東上線や西武池袋線方面への直通を視野に入れる。推進する大田区の担当者は「関係者間で合意形成できれば整備主体を立ち上げられるところに来ている。今がいちばんの重要な局面」と語る。

今後、西山手ルートや臨海部ルート、さらには蒲蒲線も開業に向けて動き出すのか。ついに動き出した「大物」の新路線計画は、首都圏の鉄道網に大きな変化をもたらすきっかけとなるだろう。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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