【産業天気図・工作機械】受注激減、今後2年間は“氷河期”濃厚
08年10月~09年3月 | 09年4月~9月 |
ここ数年活況が続いた工作機械業界だが、10~11月の世界同時不況入りで受注が歴史的な急悪化を記録。2008年度後半及び09年度前半は「雷雨」ないし「氷河期」並みの苦戦を強いられそうだ。
日本工作機械工業会の調べでは、18日発表の11月受注は517億円で前年同期比、実に62%減。10月受注の同40%減から一層減少幅が拡大し、1992年8月の45%減をも超えてバブル期以降では最悪の減少幅となった。また、600億円割れは02年10月以来73カ月ぶりで、ITバブル崩壊当時の受注レベルまで戻ってしまった。
わずか8カ月前、今年3月に付けたピーク(1418億円)からの下げ幅も64%と激落。89年12月に付けたバブル期のピーク(1266億円)から93年10月のボトム(370億円)まで、71%下がるのに3年10カ月要したのと比べると、今回の変化がいかに強烈かがわかる。
11月受注を地域別で見ると、内需は250億円で前年同期比61%減。一般機械、自動車、電気・精密のいずれもが5~8割減となった。一方、外需は64%減の267億円。牽引役だった中国、インドを含むアジア、欧州、北米の主要3極が4~8割減と大幅にダウンした。
同会の中村健一会長は、この事態を「世界で直下型地震が発生し、大津波によるパニックが起こっている」と述べ、今後のポイントとして円高影響による価格引き上げの程度や内需拡大を図る中国経済の動向、米国ビッグスリー支援の行方などを指摘。さらに「間違いなく2年後には急成長の時期がやって来る」と自らを鼓舞するように見通す。
しかし、これは逆に、2年間の低迷は避けられないとの覚悟を示してもいる。実際、従来底堅いと思われてきた重厚長大向けまでが「航空機向けは不況、造船向けも悪化し、流れが変わっている」(中村会長)。同会が12月上旬実施した会員アンケートでも、09年1~3月期の受注見通しは「減少」が74%を占め、悲観派が圧倒的となった。
仮に月間受注が11月の500億円台で続くとなれば09年の総受注は単純計算で6000億円台となり、07年のピーク1兆5900億円の6割減。業界約100社の大半は大幅赤字に陥ろう。「会社四季報」09年新春号は10月受注や業界各社からのヒアリングを基に、森精機製作所<6141>やオークマ<6103>、牧野フライス製作所<6135>など関連銘柄の業績予想を前号より大きく引き下げたが、直近11月受注が一段と厳しかっただけに、08~09年度業績がなお悪化するおそれは否定できない。
工作機械産業は製造業の中で最も好不況の波が激しいだけに、経験上、景気回復時の業績急上昇が今回も期待されよう。ただ、それが現実のものになるには、相当の時間を要しそうだ。
(内田 史信)
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