車社会の未来にはどんな法律が必要になるか 自動運転の実現に向けた法制度上の課題とは

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自動運転車で事故が起きたらどう裁かれるのか(写真:キャプテンフック/PIXTA)  
自動運転車の実用化に向けた開発競争が熾烈を極めている。一方で、自動運転に関しては事故発生時の責任問題をはじめ、課題が山積したままである。自律機械に関する研究に取り組む論者が、全3回にわたって解説する。第3回のテーマは「法律」(法学者・稲谷龍彦)。

政府によれば、2020年頃までの自動運転車の実用化を目指し、関連する法制度の見直しが進められることとなっている。現行の自動車に関する法律は多数に上るため、その見直しは大変な作業になることが予想される。その中でも、自動運転車が事故を起こした場合の法的責任の所在に関するものは、社会的な影響の大きい、重要な問題であるといえるだろう。

現在の法制度下で自動車事故が起きた場合、2つの問題が想定される。1つは、事故の損害を補償するのは誰かということだ。その際には民事責任の所在が問われることとなろう。もう1つは、国家が刑罰という制裁を科すべき対象は誰かということだ。ここでは刑事責任の所在が問われることになる。

自動運転車のメカニズム

法的な議論に入る前提として、自動運転車の自動運行のメカニズムと、自動運転のレベルについて確認しておこう。

自動運転車の運行は、自動車に与えられる3次元的な地図と、自動車に搭載されたセンサーやGPSなどから入手される現実世界の情報とを対照させ、プログラミングを通じて自動車自身に舵取りをさせることで基本的に可能になる。もっとも、現実世界においては、突発的な事象が生じることから、自動車に搭載されたシステムから入手した情報に基づいて、適宜適切な行動を取ることもプログラミングされることになる。

要するに、自動運転車の機能の本質は、大量の情報処理に基づく適切な運動の選択によって、車両を目的地に導くことにあるといえるだろう。それゆえ、情報処理の量や精度は、自動運転車の信頼性を決定する、重要な要素である。情報処理の量と精度によって、自動運転車の運動の信頼性が決定されるとすると、そこでは幾つかのレベルが想定される。

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自動車技術の基準を策定するSAE(Society of Automotive Engineers)インターナショナルは、自動運転のレベルを「レベル0」から「レベル5」までの6段階で定義している。レベル0(運転自動化なし)、レベル1(運転支援)、レベル2(部分運転自動化)まではドライバーが完全に運転の主体である。

レベル3(条件付き自動運転)においては、自動運転システムに明らかな異常が生じ、システムを信用できないような場合や自動運転システム側から運転者に介入が要求された場合を除き、自動運転中は基本的に自動運転システムが運転の主体となる。

一方、レベル4(高度自動運転)、レベル5(完全自動運転)では、自動運転中の運転の主体は自動運転システムとされている。つまり、自動運転中の運転主体は、レベル3以上から自動運転システムに段階的に移行することが想定される。通常、自動車事故が生じた場合、どのように刑事責任を問うのか。

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