【産業天気図・ソフト・サービス】IT投資減速と新業種向けの開発コスト増が負担で08年度後半から「曇り」続く

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 08年10月~09年3月   09年4月~9月

ソフト・サービス業界の2008年度後半は「曇り」、09年度前半も「曇り」が続きそうだ。金融業界の大型再編や公共の大型案件の一巡で需要に陰りが見えてきたため、各社とも新たな顧客開拓を急いでいる。未払い問題で内部統制強化に力を入れる保険業界や製造業のほか、製薬業界や病院などヘルスケア分野への投資を進めているが、金融や公共の穴を埋めるまでには至っていない。

08年度の後半には、金融危機の影響により状況は悪化し、野村総合研究所<4307>の今09年3月期営業利益は増益予想から一転、減益となる見通しだ。同社の売上高の4割程度を占める野村證券が業績不振によりIT投資を削減、さらには新たに進出した製造業などでのシステム開発の費用がかさんだためだ。その他にも、高い技術力に定評のある新日鉄ソリューションズ<2327>や伊藤忠テクノソリューションズ<4779>も、同じく新たに進出した製造業向けのシステム開発でコスト増となり、今期は減収減益を見込んでいる。

09年度前半は、さらなるIT投資の冷え込みが予想され、業界全体にとって厳しい一年となりそうだ。海外企業の買収を積極的に進める独立系最大手のNTTデータ<9613>も、公共案件の落ち込みとともに、民間企業の投資意欲減退で来10年3月期は減収減益となる見込みだ。富士通<6702>は金融案件が少ないことから、今期は情報サービス部門に関しては大幅な落ちこみはない模様だが、来期はIT投資凍結の長期化の影響は避けられそうにない。海外でのハード事業強化で売上高は増加するが、好採算の情報サービスは低調が予想され減益となる見通しだ。

一方、このような状況下では、企業側の情報システム部門の縮小により、サーバの管理などの外注が進むため、アウトソーシングに強みをもつ日立情報システムズ<9741>や住商情報システム<9719>には追い風となり、来期は営業益は微減程度で着地できそうだ。

今後は開発コスト削減へ向け人件費の安い中国、インドへの開発委託が一層進むことが予想される。こうした中、中小・中堅企業向けのシステムを手掛け、高成長を続けるオービック<4684>は新たなコスト削減対策として、中国より人件費の安いベトナムへの開発委託を検討。すでに、ベトナムでの開発委託を進める日立ソフトウェアエンジニアリング<9694>もさらなる増員を予定している。

新たな業種向けの開発コストをいかにコントロールできるかが、今後のソフト・サービス各社の成否を分けることになりそうだ。
(麻田 真衣)

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