ポルシェのスポーツカー重視戦略に見た思惑 大人気の新型SUV「マカン」に傾注はできない

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そう書くと、古くからのポルシェファンの中には、若干の不安を覚える人もいるかもしれない。実はポルシェ ジャパンの販売車種ミックスは世界の中でも突出して2ドアスポーツカーの割合が多いことで知られている。年間販売約7000台のうち「911」「718」といったモデルが実に4割をも占めているのだ。

SUVが9割とも言われる新興国と比較してはもちろん、多くの成熟国の中でもこの割合は非常に高い。古くからポルシェが正規輸入されていたこと含め、スポーツカー文化がそれなりに根付いているという素地が、その背景にあるのは間違いないだろう。

それだけにSUVの販売が増えることは、ブランドとしては危うさも内包している。有り体に言えば現状は“スポーツカーメーカーであるポルシェのSUV”だからこそ支持されている部分は小さくなく、もしポルシェの認知がSUVメーカーになったら、SUVとしてのブランド力は下がりかねず、さらに古くからの、あるいは熱心なスポーツカーファンの気持ちも離れていってしまうだろう。

もしポルシェの認知がSUVメーカーになったら…?(写真:ポルシェ ジャパン)

よってポルシェにとっては、SUVを売るためにはスポーツカーも同じくらい、いやそれ以上に力を入れて売っていく必要がある。でも、どうやって?

ポルシェ・エクスペリエンス・センターの開設

実は今回のマカンの発表会では、それに対する回答となりうる実に興味深く、壮大なプロジェクトが披露された。2021年に、千葉県木更津市に「ポルシェ・エクスペリエンス・センター」を開設することが正式に明らかにされたのである。

ポルシェ・エクスペリエンス・センターとは、ユーザーや購入希望者をターゲットとした言わばブランド体験施設。テスト用のサーキットを筆頭に、ドリフトやスラローム用、低μ路面など運転トレーニング用にオフロードといった各種コース、メカニック研修施設、ミュージアム、さらにはレストランなどを備えたもので、すでにドイツ、アメリカの2カ所、フランス、イギリス、中国にオープンしている。

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