日産が20年越しで開発した新エンジンの衝撃 圧縮比を可変させる夢の技術が遂に完成した
もっとも、こうした仕組みを知ってしまうと、なるべく踏み込みたくなくなるのが人の心理で、むしろパワフルさを享受しようとすると、通常の低圧縮ターボ・エンジン以上に、踏み込むのをためらってしまう。なぜなら踏み込めば、高圧縮側で得た取り分が相殺あるいはマイナスにさえなってしまうのでは、と思えるからだ。もっとも固定の低圧縮ターボならばそもそも取り分もないわけで比べるべくもないのだが、差し引きができるとなると余計なことを考えてしまうのは、人の悲しい性かもしれない。
日産はこの2.0Lの可変圧縮ターボをこのQX50においては、これまでの3.5LのV6NA(自然吸気)エンジンと同等という置き換えを行っている。確かにV6NAなみのパワー&トルクながら、排気量は小さく燃費にも優れており、V6比では約27%燃費も向上している。
実際にどのくらいの燃費なのかといえば、アメリカの数値を日本的な表現に直すとガソリン1リットルあたり13キロメートル(13km/L)ということである。2.0Lターボエンジンの数値とすれば「一瞬それって普通じゃない?」と思う人も多いだろう。実際に筆者もそんなふうに思った。
しかしながら、このQX50が1.9tのSUVと考えると、なかなかに優れた数値だということに気がつく。残念なのは、なかなかに優れた数値とは思うものの、革命的なものではないし、驚愕するほどの数値でもないのが実際だということ。この辺りは悩ましいところである。
そうした悩ましさをカバーしてくれたのはQX50というクルマそのものが魅力的な仕上がりを見せていたからでもある。1.9tのSUVながらもフットワークは実に軽快で、気持ちよくワインディングを駆け抜けるハンドリングを見せてくれた。また同時に可変圧縮ターボは、細かなところでは気になる点がいくつかあったものの、それ以外のシーンではこのQX50の車格にふさわしいトルク感と豊かさを感じさせた。そう考えると、夢の機構といわれた可変圧縮比エンジンがすでに販売されているということには改めて驚くのである。
e-POWER用として、より優れた効率を発揮する
またこのエンジンの開発を手がけた木賀新一氏によれば、搭載車両や組み合わせるトランスミッションとのさらに密な開発によって、このエンジンはより優れたものへと進化していく可能性を秘めているという。加えて最近の日産ではむしろ、いわゆる内燃機関よりもメジャーとなりつつあるハイブリッドシステムの「e-POWER」があるが、この可変圧縮比エンジンはe-POWER用として使うことで、より優れた効率を発揮するのだという。
その意味では、内燃機関はまだまだ伸び代を持っていると感じるし、今後の進化にも期待がかかるのである。
いやむしろ、カルロス・ゴーン前会長の逮捕という大事件に揺れている日産の今の状況だからこそ、プロダクトで意地を見せる必要があるならば、こうした技術はこの先とても大切なものとなるだろう。
そして同時に今回、改めて日本の道路でインフィニティを走らせてみて、このブランドもまたこの先、日本市場への導入を図る必要があるのではないかと感じたのだった。
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