日産、「ゴーン会長が有報に報酬額過小記載」 ルノー株は欧州で10%下落、日産ショックも?
[横浜市/東京 19日 ロイター] - 東京地検特捜部は19日、日産自動車<7201.T>会長のカルロス・ゴーン容疑者と同社代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者の2人を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕した。同特捜部は、横浜市の同社本社も同容疑で家宅捜査した。
複数の国内メディアによると、ゴーン容疑者は2011年から15年までの5年間に、99億9800万円の報酬を受け取っていたにもかかわらず、有価証券報告書には49億8700万円の報酬があったと虚偽の数字を記載。合計で約50億円の報酬を過少に記載した。
日産の西川廣人社長は同日夜に会見し、今回の2人の行為は、専門家から重大な不正であるとの判断を受けており、22日にゴーン容疑者の解職を提案する臨時取締役会を開催すると述べた。
また、今回の不正行為はガバナンス上、ゴーン容疑者に権限が集中し過ぎていたことが誘因だったと指摘し、ガバナンスの再構築に取り組む意向を示した。
同社が19日に公表した文書では、ゴーン会長とケリー氏が、長年にわたり報酬額を過小に有価証券報告書に記載していたことが判明したと指摘。
ゴーン会長には同社の資金を私的に支出するなど複数の重大な不正行為が認められ、ケリー代表取締役も深く関与していたことが判明していると言及した。
この点に関連し、西川社長は、1)報酬額を減額して有価証券報告書に記載した、2)目的を逸脱し、同社の投資資金を使って投資した、3)同社の経費を不正に使用した──の3点を確認したと述べた。
有価証券報告書の記載は適正でなく、是正がどうなるのか、現状ではわからないが、瑕疵(かし)は認めなければならないと語った。
そのうえで、独立取締役2人を含めた第三者機関を設立し、ガバナンスの回復に強めたいと表明した。
西川社長は、今回の不正発覚と2人の逮捕により、株主や関係者に大変、心配をかける事態となり、深くおわびしたいと述べた。
さらに世界の従業員、販売関係者に大きな動揺を引きこしていると思うが、社内の動揺をできるだけ安定させたいと語った。
一方、ルノー<RENA.PA>、三菱自動車<7211.T>、日産のパートナーシップに何ら影響を与えないと西川社長は断言。今後も三菱自動車の益子修CEOとは、今後も緊密に連携し、コミュニケーションを図っていきたいとした。
今回の逮捕に至った経緯に関連し、昨年来徹底してきたコンプライアンスと内部通報の結果であり、その後、ゴーン容疑者主導による重大な不正であるとの判断にいたったと説明した。
具体的には、内部通報があり、監査役を中心に問題提起の動きがあり、社内調査を進めた結果、2人の不正が発覚したと西川社長は述べた。
今回の逮捕を踏まえ、極端に個人に依存した経営から脱却し、サステナブルな経営体制見直しのよい機会になるとの考えを表明した。
ゴーン容疑者が長年、実力者として君臨してきた弊害は大きいとも指摘。刑事告発について、今日のところは答えられないが当然、告発に値すると述べた。不正がいつからか今は言えないが、長きにわたっていたと語った。
一方、西川社長自身の責任については、猛省するべき点があるとしたうえで、今は社内を沈静化、安定化させ、会社を正常な状態にして前に進めるよう、やることが山積していると表明した。
ゴーン会長は1999年、仏自動車大手ルノー<RENA.PA>副社長から日産の最高執行責任者(COO)に就任し、2001年6月から最高経営責任者(CEO)となった。
99年当時の日産は約2兆円の有利子負債を抱えていたが、ルノーと日産の部品や購買の共通化を推し進めるとともに、村山工場などの生産拠点閉鎖など大胆なリストラを断行し、コストの大幅カットで収益をV字回復させた。2005年にはルノーの会長権CEOに就任。16年には三菱自動車の会長にも就いた。17年4月に日産社長とCEOを退任し、会長となった。
日産によると、2016年度のゴーン会長の役員報酬は10億9800万円、17年度は7億3000万円だった。
(白木真紀、編集:田巻一彦)
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