「無印良品×北欧×自動運転」の意外な仕掛け 2020年実用化のバスにデザイン提供した理由

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現在、自動運転を手掛ける企業は日本をはじめアメリカ、中国、ドイツなど世界各地に存在する。その中でフィンランドを選んだ理由についてはまず、自動運転の実験がしやすい環境を挙げていた。

フィンランドは日本やアメリカ、欧州の多くの国とは異なり、法律上、公道を走る乗り物に必ずしも運転手が乗車している必要がない。当然ながら自動運転車の実証実験がしやすい。

欧州では2012~2016年にかけて、EUの助成型研究開発フレームワークプログラムとしてCityMobil2が実施され、全部で45の企業・団体が参加した。世界各地で実証実験を行っている無人運転シャトルの代表格、仏イージーマイル社EZ10とナビヤ社アルマはともに、このプログラムから生まれた。

このCityMobil2に、フィンランドからはHSL(ヘルシンキ地域圏交通政策局)、首都ヘルシンキに隣接し国際空港が位置するヴァンター市などが参加しており、2015年夏にはヴァンターでEZ10を用いた実証実験を実施し、1kmの区間を往復して合計1.9万人を輸送という実績を残している。

もう1つ良品計画が挙げた理由は、フィンランドは最近、交通業界で話題になっているMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の最先端の国であるからだ。

ルノー・トゥイジーをベースとしたSensible 4の自動運転実験車両(写真:Sensible 4)

ここでMaaSについて簡単に紹介しておくと、公共交通をはじめとする、マイカー以外のさまざまな交通サービスを、情報通信技術によってシームレスにつなぎ、1つのサービスとして利用できる新たな移動の概念である。利用者はスマートフォンのアプリを用いて、交通手段やルートを検索、利用し、運賃などの決済を行う。

ヘルシンキに本拠を置くMaaS Global社の「Whim」は世界でもっとも進んだMaaSアプリと言われる。公共交通はもちろんタクシーやレンタカー、シェアサイクルまで選択可能であり、最近自動車メーカーも採用を始めた1カ月定額のサブスクリプションを導入したことが評価されている。

MaaS先進国でも都市と農村に生じている格差

筆者も今年9月に知人の大学教授とともにヘルシンキを訪れ、国の交通・通信省やヘルシンキ市役所の担当者、MaaS GlobalのCEOに話を聞き、実際にWhimを体験することで、この国がMaaS先進国であることを教えられた。

しかしフィンランド交通・通信省の担当者によれば、都市(アーバン)のMaaSについてはWhimが理想解の1つであるものの、農村(ルーラル)のMaaSについてはまだ発展途上であると話していた。

都市には多彩な交通手段があり、複数の交通をシームレスにつなぎ、マイカーに匹敵するドアtoドアのモビリティ構築が重要となるが、農村は交通貧弱地域であることが多く、都市とは逆に単一の交通が子どもから高齢者までのあらゆる移動、さらには物流も担う必要がある。

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