第3に、北方領土問題は、日本とロシアのどちらに理由と正義があるかに従って解決すべきだ。
日本の主張に瑕疵がないわけではない。詳しく説明するゆとりはないので、結論だけ述べるが、日本が「千島列島」を放棄したのは事実である。サンフランシスコ平和条約に明記されている。しかし、日本は「千島列島」をロシアの領土だと認めたのではない。もちろん米国領だとみなしたのでもない。つまり、日本が放棄した後の「千島列島」の帰属は未定なのだ。
日本政府の交渉方針が一貫していなかったのも事実だ。4島返還でなく、2島であってもよいという考えがあったのも事実だと理解している。しかし、そうだからと言って、ロシアの主張が正しくなるわけではない。
日本とソ連との交渉において、アメリカの影響があり、ソ連に不当な譲歩をするなら沖縄を返さない、と言われたこともあった。その筋では有名な「ダレスの恫喝」である。しかし、日本はそれを受け入れ(受け入れざるをえなかったのだが)、日本政府の方針としたのであり、それは日本政府の決断だった。
いまでも、アメリカとの関係は北方領土問題に影を落とすことがある。北方領土が返還された場合、米軍基地を置かないという条件を明確に示さなければならないというプーチン大統領の要求である。プーチン氏は、安倍首相がトランプ大統領と合意したことを示す文書まで要求しているそうだが、それは日本の主権を無視する無礼な要求だ。なぜそのようなことを言うのか。プーチン氏はアメリカといかに対抗していくかが最重要問題であり、その枠の中で日本との関係をとらえているからではないか。
第4の危惧点
第4に、ロシアの主張にも欠陥がある。北方4島についてロシアの領土主張を裏付ける根拠は、実は皆無なのだ。
わずかに、ロシアは、「戦争の結果としてロシアが取得した」と主張している。これは完全な謬論ではないが、戦争の結果「千島列島」を獲得してよいと、どの国も認めたわけではない。第二次大戦後にアメリカがソ連に認めたのは「千島列島」を「占領」することだけであった。
では、ロシアは、20ある「千島列島」のうち、いくつの島を獲得するのが認められるかということになるが、これは第二次大戦後回答が出されないまま今日に至っている問題であり、簡単に解決できない原因の一つだ。「択捉」「国後」はその一部である。
あまり言われないことだが、筆者個人としては、日ロだけでなく、アメリカも加わって解決するのがよいと思っているが、アメリカがそれに応じるかどうか、わからない。
日本では、日本側の瑕疵に議論が集中するきらいがあるが、ロシア側の主張もしっかり分析すべきである。プーチン大統領の年内平和条約締結提案などは話題になるが、根本問題が忘れられてはならないだろう。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら