私大を直撃する金融危機! 駒澤大の154億円運用損は氷山の一角か

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私大を直撃する金融危機! 駒澤大の154億円運用損は氷山の一角か

世界的な金融危機の大波が日本の大学を直撃した。

中堅私大の一つである駒澤大学では「金利スワップ」「通貨スワップ」というデリバティブ取引を解約し、約154億円もの巨額損失が発生。中途解約の手数料などを支払うため、キャンパスの建物や土地を担保にみずほ銀行から約110億円の融資を受ける事態に陥った。

外資系金融機関2社と今回のデリバティブ取引を契約したのは2007年度で、契約金額は約100億円。08年3月末時点でも約53億円の含み損を抱えていたが、急速に円高が進んだことなどで含み損が拡大。「これ以上損失が増えないよう解約に踏み切った」(同大学総務部)。今後、外部有識者を集めた調査委員会で、投資の経緯を明らかにしていく。

運用積極化の背景に厳しい私立学校経営

大学財務に詳しい公認会計士は「駒大の07年度予算を見ると、帰属収入に占める資産運用収入の比率は約8%と、他の大学に比べて高めの設定だった」と分析する。帰属収入は一般企業でいえば売り上げに相当する。日本私立学校振興・共済事業団(以下、私学事業団)の集計によると、帰属収入に占める資産運用収入の平均値(516の大学法人)は06年度で2・7%。それと比較しても駒大の資産運用に対する依存度の高さが見て取れる。

駒大で巨額の「実損」が明るみに出た一方、立正大学では9月末時点で保有有価証券の「含み損」が約148億円に達することがわかった。豪ドルを組み入れた仕組み債で、円高・豪ドル安の影響で時価評価が下がったのが主な要因だ。ただ、大学側は「満期保有目的が中心。あくまでも含み損で、現時点で確定した損失ではない」(経理部)と強調する。

仕組み債とは、債券とデリバティブを組み合わせた金融商品。組成の中身によってリスクの度合いはさまざま。ただ「レバレッジをかけて取引規模を拡大できるデリバティブは怖くて手が出せない。だが、リスクが限定される仕組み債なら大学としても検討の余地がある」(都内大手大学の財務担当者)。実際、特定非営利活動法人・21世紀大学経営協会のアンケート調査によると、回答した私立大学139法人のうち、「仕組み債(元本リスクなし)」を保有するのが71法人、「仕組み債(元本リスクあり)」も36法人に上った。

私学事業団の集計では、02年度に1・6%だった帰属収入に対する資産運用収入の比率は年々上昇している(06年度2・7%)。私立大学が資産運用を積極化する背景には、学校経営を取り巻く厳しい環境がある。少子化による18歳人口の減少で、今後は学生数の増加は期待できない。定員割れを起こす私立大学の割合は47%と、すでに全体の約半数近くに達している(08年度入試分・私学事業団調べ)。

私立大学では、収入の約8割を入学金や授業料などの「学生生徒納付金」が占める。しかし、学生数の頭打ちや減少が予想される中、国公立大学との学費差を考えると値上げはままならない。そこで収入源確保のため、補助金や寄付金、事業収入などの拡大と並び、力を入れたのが資産運用だった。これを証券会社もほうっておかない。都内中堅大学の財務担当理事は「証券会社の営業マンから頻繁に電話がある。今年の夏までは、外資系も売り込みに来ていた」と話す。仕組み債やデリバティブ商品は外資系証券の得意分野。リーマンショックの直前まで盛んな営業活動があったようだ。

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