エリート社員がハマった最悪の不動産投資 美人営業の「疑似デート商法」には騙されるな

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A男さんは大学を卒業して以来、ずっと彼女がいなかったので、女性と2人きりで会うのは久しぶりだったのです。しかも美人のR子さんですから、ドキドキしてしまうのも当然でしょう。

R子さんは、A男さんの仕事のことからプライベートまで、屈託のない笑顔でどんどん質問をしてきます。

「お仕事はどんなことをしているんですか?」

「趣味はなんですか?」

「休日は何をして過ごしているんですか?」

A男さんはR子さんと話しているうちに「かわいいし、話も面白いし、いい子だな。彼女が不動産投資を勧めるのだからいいのかもしれないな。あんまり細かいことを言うと嫌われそうだし、契約しよう」と思ったそうです。

カフェでは、不動産投資について簡単な説明しかなかったそうですが、A男さんは後日、その不動産会社に出向き、あっさり契約してしまったのです。

美人営業と「疑似デート」後、契約したらなしのつぶて

しかし、契約してからというもの、それまで頻繁に来ていたR子さんからの連絡もパタリとやみ、メールで連絡しても返信がなかなか返ってこなくなったそうです。どうやらこの会社は、イケメンや美人が営業を担当し、顧客をその気にさせて契約させる「デート商法」のやり方で、業績を伸ばしているようでした。最近、イケメンや美人をホストやキャバクラからスカウトして、こうした古典的な「デート商法」で契約を取りつける不動産会社が増えているのです。

急に冷たくなったR子さんの態度を見て、「もしかしたら、これはだまされたのかもしれない……」とようやく冷静になったといいます。これは、「一度、専門家に見てもらったほうがよいかもしれない」と思い立ち、筆者のところに相談に来られたというわけです。

A男さんが契約した物件は冒頭でもお伝えしたように、実際相場よりもかなり高く販売されており物件の概要データを見ただけで、良心的な会社とは言いがたいものがありました。

では、肝心の融資状況はどうだったのでしょうか。A男さんは勤務先も安定しており、勤務期間も長かったため、頭金10万円、金利1%程度、融資期間45年という好条件で、物件価格の大半を融資されました。しかし、貸すといっても、毎月11万円の家賃収入よりも返済額のほうが多く、毎月のキャッシュフローは、マイナス1万円。そのほかにも、管理費、修繕積立金のほか、固定資産税などの負担もあるのです。またそもそも東京郊外でかつ最寄り駅から15分も離れており、エリアにしては家賃が高いため、空室リスクも高い物件でした。

次ページ違約金を払うも「負動産」を損切りできただけ幸運
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