超金融緩和策で復活する、ハンガリー 来日中のオルバン首相は、アベノミクスの強い味方
ハンガリーの付加価値税はEU最高の27%、2010年の返り咲きの後にオルバン政権が引き上げた。税率には3段階あるものの、いわゆる「軽減税率」を採用する範囲は減少している。2012年に政権に返り咲きを果たした安倍政権も、消費税率を5%から8%に引き上げる。両政権とも財政は引き締め基調で、金融政策頼みといってよい。
「アベノミクスの進化」にも参考になるハンガリー
米国のQE3終了が視野に入る中で、アベノミクスの第一の矢で金融緩和を続ける日本は、円キャリートレードが盛んに行われた時期と同じように、頼もしい存在に見えている。限界的資金の流入は経常収支赤字国にとって、つねに重要である。このところV4諸国のスロバキア、ポーランドが続けてサムライ債を低利の日本で発行するなど、中東欧への資金供給源となっている。ハンガリーも資金調達のチャネルを増やすべく、ソブリン債の格付け、それが無理でもアウトルックをぜひ引き上げたいところである。
他方、エンドユーザーへの目配りという視点は、日本銀行にも参考になる。成長というと一般的には設備投資資金に限られそうだが、ハンガリーでは運転資金も認められることになった。融資の現場では、資金目的で運転資金と設備投資資金の線引きがあいまいなまま資金需要が出てくることも多い。
ただし、金融サービスが必ずしも全土に行き渡っていないハンガリーに対して、オーバーバンキングの日本では処方箋は異なるだろう。日本における趨勢的な預貸率の低下や中小金融機関の不振が、需要側要因なのか供給側要因なのか、地域特性はどうかなどにより、金融緩和にさらにターゲティングを入れて行くかが異なるであろう。
ハンガリーのFGSを実施するチャネルとしては、旧貯蓄銀行だったOTP銀行、旧信用銀行だったK&H銀行、旧外国貿易銀行だったMKB銀行といった旧政策金融銀行3行で3分の1以上を占めた。かつてオーストリア=ハンガリー二重帝国であった経緯から、オーストリア系のエルステ銀行やライファウゼン銀行などがハンガリーで展開しているが、こうした銀行は後塵を拝している。
エルステ銀行はハンガリーでOTP銀行に次ぐ規模の資金量を提供しており、郵便局でATMも設置しているが、2011年にオーストリア中銀が同地域での預貸比率を110%以下に下げるように求めたことなどから、同国での支店を減少させた。FGSの資金を求めて銀行を変えることも多くなり、旧政府系経由のチャネル中心でのFGSでよいのかというところに今後、検証が入ることになるだろう。
さて、現在の時点でのハンガリーの超金融緩和政策の効果だが、金利は下がり、融資は下げ止まりつつある。
FGS実施によって、零細企業が借りるようになり、設備投資向け投資が出てきている。直接投資も2012年はこの地域で随一の135億ドルがなされるなど、回復を見せてきており、ハンガリーも景気後退から抜け出しかけている。景況感は好転、中央統計局の予想では同国の成長率は今2013年0.7%、来2014年1.9%と回復基調である。
FGSはブダペストなど中北部に偏りがちな融資を南東部にシフトさせており、均衡的発展の一助となっている。1月にバイトマン・ドイツ連銀総裁は、日本とハンガリー両国の中銀への政府からの圧力に対して、懸念を表明した。その両国は中銀総裁交代を経て、共に「バズーカ」と称される超金融緩和策を推進して経済政策の柱としている。地政学的にも、経済規模や状況も異なる両国だが、ハンガリーがわが国から学んだように、消費税引き上げ後の次の一手に悩むアベノミクスにも、参考になる点があれば学びたいものである。
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