スズキもデータ改ざん、疲弊深刻な生産現場 止まらぬ検査不正、日産はコスト重視が根因
一連の完成検査不正の発端となった日産は9月26日、燃費・排ガス検査の不正に関する調査の最終報告書を国土交通省に提出した。今年7月に明らかにしていた燃費・排ガス検査の不正だけでなく、別の検査でも新たに不正が発覚。
日産の規範意識の欠如が改めて露呈した格好だが、会見した山内康裕チーフ・コンペティティブ・オフィサー(CCO)は「これで膿は出し切った」と強調。西川廣人社長の記者会見や関係者の処分公表もなく、一連の不正問題に対して幕引きを図りたい日産側の思惑が透けて見えた。
報告書によると、燃費・排ガス検査の測定値書き換えなどに加え、別の抜き取り検査でも試験を実施していなかったり、測定値を改ざんしたりするなど複数の不正が判明した。国内6工場のうち4工場で、少なくとも253台あった。ブレーキ液残量警告灯の検査を3工場で未実施だったほか、騒音試験の風速条件を書き換えるなどしていた。
背景に過度のコスト削減追求
日産は報告書の中で、抜き取り検査における不正が相次いだ原因や背景として、完成検査員の人員不足、検査員への教育不足、不十分な設備、計画通りの生産出荷を優先することによる完成検査軽視の風潮など、10項目を挙げた。これらの根底には日産による過度なコスト削減の追求がある。
法律事務所が作成した報告書でも「効率性向上やコスト削減に力点を置くあまり、本来であれば切り捨ててはいけないものまで切り捨てた」と日産の経営姿勢を批判。記者会見で山内CCOも「(コストと品質管理の)優先順位が正しく判断されていなかったと言える」と認めざるをえなかった。
コスト偏重の一例に、抜き取り検査で不具合が見つかった場合に車両の検証や設計部門との調整などをする技術員が現場からいなくなったことがある。かつては完成車の組み立て工場ごとに配置されていたが、工場の人件費を削減するため技術員の所属先を本社部門に変更。人員補充もされず、定年退職などで徐々に減少していった。その結果、工場と本社間のコミュニケーションが減り、検査の測定値が基準から外れた場合の技術的なサポートも得られず、検査員が不正に手を染める遠因になった。
法律事務所が作成した報告書は「2000年代以降、排ガス検査の測定値書き換えが常態化した」と指摘しており、カルロス・ゴーン現会長が主導した日産の再建時期と重なるのは偶然ではない。新車の生産工場を決める際に国内外の工場で生産コストや品質などをコンペで競わせる手法は現在も続いており、人件費の面で不利な国内工場に対してプレッシャーを与えた可能性も考えられる。
「良い商品を出すためにコストダウンは不可欠」(山内CCO)というように、仕様や機能を高め、不断のコスト低減努力をする姿勢はメーカーとして必要だろう。ただ、ルールを逸脱したものづくりは到底認められるものではない。日本車メーカーで相次ぐ不正は、経営の優先順位は何かという重大な問いを投げかけている。同様のデータ書き換え問題が発覚したスバルは、明日にも最終報告書を国交省に提出する予定だ。その内容にも注目が集まる。
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