早稲田政経学部が数学必修化に踏み切る真意 数学だけではない入試改革の真の狙いとは?
今回の入試改革にあたっては、学部内からも不満の声が出ていた。経済学では微分・積分が必須で、高校数学でいえば数学Ⅱ・Bから数学Ⅲ・C以上のレベルが求められる。経済学科の複数の教授は「ミクロ経済学の必修講義では数学ができない人が多くて、約4割の学生が再履修することもある。やるなら数学Ⅱ・Bまでを必須化すべき」と話す。逆に、政治学科の一部の教員からは「数学を必須化することで絶対に早稲田の政経にいきたいという受験者がいなくなるのでは」と、伝統や独自色が薄まることを懸念する声もある。
須賀教授は、そうした学内の批判があったことを認めたうえで、「これからの時代をグローバルリーダーとして生きていく若者たちに数学がいらないと断言できる人はいないだろうし、また数学の入門レベルのロジックを忘れないでほしいというメッセージとしては、数学Ⅰ・Aだけで十分だろう」と説明する。さらに「独自試験で政治や経済に関する日本語と英語の長文を読解してもらうことで、受験生の政経学部への適性は把握できる」と政経学部の独自色はむしろ強化されるとする。
「記述式長文読解」のハードル
実は今回の入試改革の目玉は数学の必須化だけではない。受験生にとってもう1つ高いハードルになりそうなのは、日英両言語による読解問題だ。通信教育大手Z会グループの教室部門を統括するZ会エデュースの高畠尚弘社長は、「必須化される数学以上に難関になるのではないか」と指摘する。
現時点で読解問題は「新書レベルの文章を読んでもらうことを想定している」(政経学部関係者)といい、文章の内容自体はそれほど難易度の高いものにはならないという。だが「今の高校生はちゃんと新書すら読めない」(大手学習塾講師)、「多くの高校生は記述解答が苦手で、記述となったとたんにあきらめて白紙解答する生徒もいる」(大手学習塾幹部)。教育現場や学習塾業界では、現状のままで新試験に対処するのは相当難しいという見方が大勢を占める。
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