企業が年配の人材を積極的に雇用すべき理由 年配の労働者は辞めずに働いてくれる

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最先端の企業は、年配の従業員向けに、タスクや勤務時間をより柔軟にし、若い従業員を教育する機会を設けたり、段階的な退職を実現できる「もう1つのキャリアパス」の設定を検討し始めている。

例えば、デロイトでは、経営幹部になる見込みはないものの、重要な専門知識を持つ従業員向けに、新たなキャリアパスを複数用意した。

大手製造業では、独自動車大手BMW<BMWG.DE>が、年配の従業員のスキルや経験を評価する先駆者として取り上げられることが多い。同社は、労働環境の効率化のため生産ラインを変更し、職場では年齢で差別しない言葉遣いを奨励している。

ニューヨークのコロンビア大学メイルマン公衆衛生大学院の高齢化センターでは、この3年、企業に「スマート高齢化」賞を贈っている。受賞企業は、高齢労働者を積極的に採用して登用したり、柔軟な勤務時間を設定したり、若手を教育してもらう機会を設けたりしている。

年配の労働者は長く働いてくれる

例えば、今年受賞した会計事務所PKFオコナー・デービースでは、他の会計事務所からは退職を促されるような年齢の会計士を採用しており、従業員700人のうち、250人超が50歳以上になっている。週労働時間の短縮など、勤務スタイルの選択肢も提供している。

「大企業の間では、人的資源流出への懸念が確実に高まっている。長く働いてくれる年配の労働者を雇用する新モデルへの関心は強い」と、メイルマン大学院のリンダ・フリード高齢化センター長は言う。

フリード氏は、高齢の従業員を雇うことで人件費や医療保障費の負担が上昇することを懸念する雇用主もいると指摘。メディケア(高齢者・障害者向け公的医療保険制度)を変更し、高齢労働者も加入できるようにして、雇用主が提供する医療保険に入らなくても済むようにすることを同氏は提唱している。

また、企業が公的年金に負担金を拠出する義務を負う雇用年数を、従業員1人につき計40年までとすることで、企業に採用を促すことを提唱する研究者もいる。

態度の変化も重要だ。

「ビジネス界では、年配の従業員の人材的価値に注目が高まっているが、まだまだ早期の段階だ」と、経済シンクタンク、ミルケン研究所の高齢化研究部門トップを務めるポール・アービング氏は言う。

「浸透するには時間がかかる」

(Mark Miller 翻訳:山口香子、編集:伊藤典子)

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