ロボットが食品工場の救世主になれない理由

中小企業が使いこなすには「橋渡し役」が必須

北海道で中小総菜工場を営むコスモジャパンでは、焼き鳥の具材である鶏肉やネギを串刺しにする手前で整列させる工程にロボットを導入した。しかし、試行段階では具材の形状にばらつきがあり、画像認識が難しかった。そこで、前工程で具材を均一な形状にそろえるよう心がけた結果、ようやく導入に至ったという。

しかし、このようにうまくいくケースばかりではなく、思うように活用できず「生産性が導入前を下回ることもある」(経済産業省ロボット政策室の小林寛係長)。実際、展示会で従来つかみにくいとされてきた肉片をピッキングするロボットを見つけ、記者がカメラのシャッターを切ろうとすると、ロボットハンドから肉片の模型が床に滑り落ちてしまうこともあった。

食品機械展示会でデモを行っていた肉の塊をピッキングするロボット(記者撮影)

さらに、食品工場側のノウハウ不足も要因だ。安川電機・髙宮浩一営業本部長は、「(産業用ロボットを使いこなす)自動車会社は購入したロボットを工場のシステムに組み込む技術部隊を持つ」と話す。一方、中小食品工場にはそうした要員がおらず、自力のプログラミングは至難の業。先述したコスモジャパンの小林惣代表は「大企業ならロボットを容易に設置できても、中小には難しい」と嘆く。

ロボット導入の“指南役”育成が急務

そんな食品業界の突破口として関係者の多くが挙げるのが、「ロボットシステムインテグレーター(SIer)」と呼ばれる企業の存在だ。SIerは“ロボット初心者”の代わりに、工場のラインに最適な自動化機器を選別・統合する役割を担う。

ギョウザをすくい上げ、皮に“ひだ”をつける型に移動させるロボットシステム(記者撮影)

だが現状はロボットSIerが足りず、食品工場の特殊性を理解する事業者はさらに少ない。食品製造業の自動化を手掛けるあるSIerによると「知識のない食品工場の多くは、ロボット導入というと工程の全自動化(無人化)をイメージしてしまう」という。しかし、現状の技術では自動化できない工程が存在する。見かねた経産省は、SIerの業界団体設立に向け動きだした。食品などの未開拓領域に関する情報共有のほか、関連業種からの新規参入も促したい考えだ。

さまざまなロボットを備えるSIer育成施設も増えつつある。栃木県で「スマラボ」という施設を運営するFAプロダクツの天野眞也会長は、「メーカー側からも需要があり、いずれは全国展開したい」と話す。

当記事は「週刊東洋経済」6月30日号 <6月25日発売>からの転載記事に加筆したものです

最も強い危機感を抱くのは、食品業界とかかわりの深い農林水産省だ。食品製造課の横島直彦課長は、「日本全体が一層の人口減少を控え、移民政策の急進展は期待できない。現時点で多少生産性が落ちるからと自動化をためらえば、近い将来にそもそも何も作れなくなる」と言う。横島氏は、戦後初となる経産省からの出向課長。農水・経産両省のロボット関連の取り組みをつなげ、脱縦割りで政策の加速を狙う。

ロボットメーカー側は新規分野として食品業界に注目してきたが、売れ行きは鈍かった。食品工場は生き残れるか。SIer育成の本気度が問われている。

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