イタリアのリスク、危機の波及は防げるのか 3つのシナリオが想定できるイタリア政局
こうした状況からECBの金融政策の正常化ははなはだ難しい、と想定はしていたが、イタリア政治の迷走ぶりを受けてのイタリア国債の価格下落で、ECBも緩和解除を慎重にせざるをえなくなったのではないか。9月には終了する方向だった資産購入プログラム(量的緩和)も、まだ継続する可能性が出てきたといえよう。
イタリア政治発のリスクがクレジット(信用リスク)市場に蔓延しつつあったバブル的なものを壊すきっかけとなるのかどうかは、周縁国の国債にまで売りが波及するのかどうか、にかかる。現時点では、マッタレッラ大統領は、かつてIMF(国際通貨基金)で局長を務めたカルロ・コッタレッリ氏に組閣を委任しているところだ。しかし、再び大統領に拒否される可能性もあり、再選挙が早まることも想定しておくべきであろう。
タイミングこそはっきりしないが、再選挙があるとすれば、注目点は次の政権がどういう形式に収まるか、である。
ポピュリズムの動きは加速するのか
第1のシナリオは同盟と五つ星運動の連携。これはポピュリズムの流れが勢いづく可能性が大きく、金融市場にとって脅威となるシナリオだ。
第2のシナリオは民主党(PD)の動きの活発化。PDがパオロ・ジェンティローニ現首相の続投を提案する場合、直近の選挙で五つ星運動に奪われた票の一部を取り戻す可能性がある。反ポピュリズムが再び団結すれば、金融市場にとっては好ましい結果となるかもしれない。
第3のシナリオは、同盟がシルヴィオ・ベルルスコーニ氏率いるフォルツァ・イタリアと連携し、中道右派連合が形成されることだ。「同盟」の過激な姿勢が多少なりとも緩和され、かつ、中道右派による政権であれば、金融市場も平静を取り戻しやすいことが考えられる。
とはいえ、今の動きが3つのシナリオのどれに収束していくのか、まったく予断を許さない。上記で指摘した第1のシナリオが着々と進行すれば、イタリア国債のスプレッドはさらにワイド化する可能性が大きくなる。その結果、実力に比して高い通貨ユーロが負担となり、脱ユーロに関する動きが本格化して国民投票へと進展するそれもある。いよいよイタリアにおけるポピュリズムの流れは加速しかねない。そうした事態を避けられるのか、不透明な要素が多すぎる中、今は結論は当然として、方向性すら決めてかかるのは危険である。当面は、今後数日間の政局、世論調査の結果等を注視するしかない。
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