中国期待には各市場で温度差 高成長は当面望み薄か

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10月21日、中国経済の持ち直し期待で豪ドルが戻り基調をたどっているが、株式市場では中国関連株はそれほど株価が急回復しているわけではない。写真は北京市内で4月撮影(2013年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 21日 ロイター] - 豪ドルが戻り基調をたどっている。その背景は中国経済の持ち直し期待だ。ただ、株式市場では中国関連株はそれほど株価が急回復しているわけではない。

いくつかの経済刺激策で景気腰折れへの懸念は後退したが、構造改革を進める中国にはしばらく高成長は期待できないとの見方も多く、中国期待には各市場でやや温度差がある展開になっている。

<ショートカバーで豪ドル上昇>

豪ドルは対ドルで8月末を2番底とし、回復基調にある。4月の1.05ドル台からはまだ半値戻しすら達していないが、今年6月中旬以来の0.96ドル台を回復。対円でも6月以来となる95円台に接近、戻り基調を鮮明にしている。

その背景は中国経済の持ち直し期待だ。鉄鉱石など多くの資源を中国に輸出するオーストラリアは、中国経済に連動しやすい。「シャドーバンキング問題などで中国経済の悪化懸念が高まり、ヘッジ目的のショートが積み上がっていたが、景気回復期待で買い戻しが入っている」(東海東京調査センター・シニアストラテジストの柴田秀樹氏)という。

ばら積み船運賃の国際市況を示すバルチック海運指数<.BADI>は8月初旬には1000ポイントを割り込む水準だったが、2カ月足らずで2000ポイント台に上昇。背景には中国の資源輸入の回復があるとみられている。

中国の最大の輸出先である欧州で景気が持ち直しているほか、中国政府は7月以降、インフラ投資など成長率回復につながる政策を打ち出している。中国の第3・四半期の国内総生産(GDP)伸び率は前年同期比7.8%と、今年最も高い伸びを達成。市場に景気持ち直しの期待感が広がった。

過去最高値を更新する欧米株が続々出てきているのは、米金融緩和の長期化期待とともに、中国経済の悪化懸念が後退していることも大きな要因の1つだ。

<構造改革は来年もっと厳しいとの見方も>

ただ、中国政府は構造改革路線を変更しないとの見方も多い。むしろ来年はもっと厳しくなるとの指摘もある。「新体制となって、1年目は成長もある程度高く維持しなければならなかったが、2年目は政治的プレッシャーも低くなる。成長率目標は7.0%程度に引き下げるのではないか」と中国経済に詳しいSMBC日興証券の白岩千幸氏はみている。

上海総合指数<.SSEC>は6月25日をボトムに下値を切り上げる展開を続けているが、9月中旬以降はもみあいの展開に転じている。

東京株式市場でも中国関連株の代表格であるコマツ<6301.T>は8月末をボトムに9月20日まで戻り歩調をたどったが、その後、再び下落するなどやや方向性に乏しい展開となっている。「中国関連はもう少し見極めたいという投資家が多い」(大手証券トレーダー)という。

賃金が上昇し、高齢化が進む中、「世界の工場」としての中国は変容を迫られている。投資型経済から内需型経済へのシフトだ。このシフトに伴う構造改革は長期的な経済成長のためには不可欠だが、短期的には圧迫要因となる。成長と構造改革のバランスをうまくとっていくことができるかが今後の中国を見る上での焦点だ。

ニッセイ基礎研究所の上席主任研究員の三尾幸吉郎氏は、「高度成長期やバブル崩壊の後、投資先がなくなってしまう国が多いが、中国は成長が鈍化したとはいえ、環境やインフラなど投資先はまだまだある。構造改革を進めていきながら、成長率が下がれば投資を増やすという硬軟合わせた政策をとっていくのではないか」との見方を示している。

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