中国、地方債発行の試験プログラム拡大目指す 地方政府の債務問題はどうなるのか

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10月21日、中国政府は来月、2011年に導入した地方政府が直接的に債券を発行することを認める試験プログラムの拡大を決定するかもしれない。写真は2011年1月、上海で撮影(2013年 ロイター/Carlos Barria)

[上海 21日 ロイター] - 中国政府は来月、2011年に導入した地方政府が直接的に債券を発行することを認める試験プログラムの拡大を決定するかもしれない。

地方政府が抱える膨大な借り入れの大半は実態が見えにくく、中国の金融システムの安定を脅かすとの懸念に対応するためだ。

11月に長期的な改革に関する政策課題を話し合う共産党中央委員会の第3回全体会議(三全中)が開催されるのを前に、国務院発展研究センターが、地方債のより大幅な活用を提案した。

地方政府の債務総額は、一部の非公式推計では4兆ドル、つまり中国国内総生産(GDP)の42%に上る。ただ、大半は地方政府傘下の金融会社(LGFV)を通じて調達され、借り入れの規模や健全性は公開されていない。こうした不透明性は、情報開示が義務付けられ、幅広い層の投資家に債務不履行(デフォルト)リスクが分散化される地方債を用いることで解消されるだろう。

国務院発展研究センターは最近、党指導部に地方債の活用拡大案を提出し、先週になって人民大学のウェブサイトで内容が公表された。それによると同センターは、後戻りできないような流れを作った上で、地方政府が独自に債券を発行する余地を広げるべきだと訴えた。

中国の法律では地方政府は原則的に自らが起債することを禁じられているが、LGFVを経由してインフラ整備プロジェクトの資金を調達してきた。

LGFVによる地方政府の調達は、中央政府が4兆元に上る大規模な景気対策を打ち出した2008─09年に急増。世界銀行は今月、「中国地方政府の債務増加は、その調達構造の複雑さや不明瞭さを考えれば懸念材料だ。透明性の欠如は貸し手や投資家、政策担当者にとって受け入れ可能な水準以上に債務を膨らませてきた」と警告した。

こうした中で中国国内の改革推進派の多くは、三全中で地方債の試験プログラムの積極的拡大が発表されることに期待を抱いている。彼らもまた、地方政府が銀行融資に頼っている現状が野放図な支出につながっており、LGFVの利用はその実態隠しを助長しているとみている。

エコノミストは、地方政府に直接起債を幅広く認める上で、情報開示基準を備えた真っ当な地方債市場を創設することが鍵になると指摘。これが地方政府に厳しい財政規律を課すことに一役買うという。

地方債発行の拡大への備えとしては、国務院発展研究センターと並ぶ有力シンクタンクである中国社会科学院が先月、地方政府の格付けの発表に向けて大手格付け会社と連携する動きも見えた。

<借り入れコストは低下>

中国財政省が3月に設定した今年分の地方債発行枠は3500億元で、地方政府の借り入れ所要総額に比べれば引き続きごくわずかな規模といえる。

それでもこれらの地方債に対する投資家の反応は上々で、利回りは3.8─4.5%程度と、同年限の国債利回りの下限に近い水準で推移している。対照的に財政基盤が弱く、信託会社やその他の「影の銀行(シャドーバンク)」に頼らざるを得ない自治体の場合、年10%を超える金利の支払いを余儀なくされている。

つまり地方債を発行できれば、多くの自治体は借り入れコストを引き下げることができるのだ。

より長期の債券を利用すれば、資金回収に何十年もかかるインフラ投資と、その調達のために利用されることが多い借り入れの期間が短いというミスマッチの緩和にもつながる。

かつて人民銀行(中央銀行)に勤めていたWu Xiaoling氏は先月、ロイターに対して「高速道路建設計画を例にすれば、投資元本と金利負担の回収には建設から20年ないし30年はかかるかもしれないが、銀行からの資金借り入れ期間は大抵3年から5年だ」と説明した。

もっとも既発の小規模な地方債プールが低利回りにとどまっているのは、財政省が財政基盤の強い自治体を選別して試験プログラムの対象としているという投資家の想定が反映されているだけの可能性もある。

上海にある中堅の資産運用会社のある債券アナリストは「もし突然、すべての自治体の発行が許されるようになれば、市場はもはや地方債を特別な存在だとは考えず、ファンダメンタルズに基づいて見極める形に戻るほかはないだろう」と話した。

<当局内には警戒感も>

中国のメディアによると、楼継偉財政相は先月、主に地方債という形に基づく標準化された地方政府の資金調達メカニズムを徐々に形成していく必要性を語ったという。

問題は「徐々に」が意味するところだ。

今月中には地方政府の債務に対する公式の監査報告が公表されるが、その内容次第で地方債発行の試験プログラムが拡大されるか計画倒れになるかが決まる可能性がある。

前回の監査では2010年末時点の地方政府の債務額は10兆7000億元(1兆7600億ドル)となった。これはスタンダード・チャータード銀行などが使っている算定基準よりも定義を絞っており、同行の見積もりでは最大で4兆ドルに達している。

もし今回の監査結果で債務が劇的に増加しているようなら、当局はプログラム拡大に二の足を踏むだろう。

一部の政府系メディアは先月、債務額は2010年から12年までに2倍近くに膨らんだとした監査担当者の発言を伝えたが、その後この記事は削除された。

実際、財政省内部では地方債の発行拡大を許容すれば、地方政府の借り入れ意欲を高めて債務問題が悪化するだけになると懸念する声も出ている。こうした警戒感があるため、大半のアナリストは試験ブログラムは小幅な拡大が承認されるにとどまると予想している。

(Gabriel Wildau記者)

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