ソニーの新中計、目指すは「3年で2兆円創出」 営業キャッシュフローを最も重視

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吉田社長は赤字のモバイル事業について「スマートフォン市場はコンシューマーエレクトロニクスの領域では最大の市場だ」と指摘。「テレビやカメラだけでなく、モバイルというひとつのレバーを持っておくことは長期的には事業の安定性につながる」と述べ、「現状、事業を売却することは考えていない」と強調した。

ソニーはホームエンタテインメント&サウンド、イメージング・プロダクツ&ソリューション、モバイルコミュニケーションの3領域を「ブランデッドハードウエア」と位置付けており、前期に20年ぶりに最高益を更新する原動力となった。

吉田社長は「ブランデッドハードウエアは今後3年で最も安定したキャッシュフローを生む事業になると見込んでいる。ソニーが今後成長投資を続けていくためのキャッシュカウと位置づけ、いたずらに規模を追わず、プレミアム路線を堅持する」と強調した。

全体の営業利益計画は開示しなかった。吉田社長は「この3年間は利益成長よりも(継続的に収益を生み出せる)リカーリング比率の増加などで利益の質を高めることに軸足を置く」と語った。

ソニーは中期計画の発表に先立ち、200万曲超の音楽著作権を管理するEMIミュージック・パブリッシングを子会社化すると発表した。アラブ首長国連邦(UAE)の政府系ファンド、ムバダラインベストメントカンパニーからEMI株の約60%を約23億ドル(約2550億円)で取得する。

吉田社長は「これはコンテンツIP(知的財産)強化のための投資だ。音楽出版は収益が安定したリカーリング事業であり、この投資は長期的な成長に向けた重要な布石になる」との認識を示した。

ソニーはEMIの持ち分約40%に関する再評価益を営業利益に約1000億円計上する見込み。再評価益およびEMIの連結子会社化に伴う業績への影響は2018年度業績見通しに反映されておらず、現在精査中という。

中計発表後に下げ足速める

中期計画発表後、ソニーの株価は下げ足を速め、一時3%を超す下げとなった。

これについて、いちよし証券投資情報部課長の及川敬司氏は「ゲーム事業の先々の収益目標を嫌気し、瞬間的に売られたが、プレイステーション4が発売されてからずいぶん時間がたつ」と指摘。「(ゲーム事業は)累積販売台数に応じて発生するゲームのダウンロードや、会員型のビジネスを通じ、安定的に収益を稼ぐビジネスに変わってきている。必ずしもゲームが駄目というわけではなく、落ち着いてみればそんなに悪い内容ではない」との見方を示した。

(志田義寧 取材協力:長田善行)

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