これまでのESはアメリカでは最もお買い得な仕様が4万ドルを切るぐらいの価格設定となっている。メルセデス・ベンツ「Cクラス」はESよりも価格設定が上だが、BMW「3シリーズ」やアウディ「A4」はESよりも安めとなっている。
日本では、レクサスの中でもFR(後輪駆動)を採用するISのほうがFFのESよりも格上に感じるかもしれないが、見た目もゴージャスなESは、クラス以上の満足感を与え、レクサス車の中でもトップクラスの買い得感を見せている。そのことがアメリカのお父さんたちを中心に人気を呼ぶ理由だ。
乗っているクルマで社会的地位がわかるアメリカ
加えて、アメリカ固有の事情もある。南カリフォルニアでかつてレクサス車の販売に携わっていた事情通はこう話す。
「ESほど売りやすいレクサス車はありませんでした。たとえば長年、トヨタブランドのセダン『カムリ』に乗っていた大手企業のサラリーマンで課長クラスの人が、部長級に昇進したので『自分もやっとプレミアムブランドに乗れる身分になった』と喜び勇んでレクサス『ES』を買いにくるのです。そのため値引き要求もあまり強くありません。とにかくこちらから売り込まなくてもよく売れるクルマでした」
この現象が意味するのは、単に昇進して給料が上がるために、カムリからESに乗り換えるという話ではない。アメリカでは小切手での取引を除けば、マネーロンダリング防止の意味もあり、新車の現金販売はほとんど行われない。一般的にはローンやリースを利用するのだが、この時の与信はクレジットカードを含め、過去に受けた融資と返済履歴のすべてが対象となり、仕事や役職なども問われる。日本と異なり、与信結果で個々に金利や融資額が異なる。
つまり欲しい新車があってローンを申し込んでも購入可能な融資が受けられないこともあるのだ。中産階級の子女が数年間海外で仕事に従事してアメリカに帰国してから新車を購入しようとしたら、数年間アメリカ国内での融資実績がないとして、金利が高めでしかも融資額も期待を下回るものになったという話も聞く。それほど審査は厳しいものとなっている。
アメリカではローンやリース与信をパスして、レクサスやメルセデス・ベンツ、BMWなどのプレミアムブランドを購入できるということは、一定以上の社会的地位を認められたことにもなる。これがアメリカでは「乗っているクルマで社会的地位がわかる」とされるゆえんだ。どんなに頑張っても身の丈以上のクルマにはまず乗れない。それでも身の丈以上のクルマに乗っていれば、「犯罪集団に加担しているのではないか?」と疑われてしまうことすらあるという。
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