それでも日経平均が2万4000円へ向かう理由 ここからの「戻り売り圧力」は相当強そうだ

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一方、長い目でみると、需給面などテクニカル指標の一部では改善の兆しもうかがえる。それを示唆するのは日経平均株価の「移動平均線の収束」だ。2017年9月、北朝鮮情勢の緊迫化からリスクオフの流れが加速し、日経平均株価は1万9200円台まで下落していた。しかし、チャートに目を移すと、このとき25日移動平均線(短期線)と200日移動平均線(長期線)が1万9500円前後のところに集まっていた(収束)。これは値幅調整(価格)と日柄調整(時間)を経ることで短期投資家と長期投資家の買いコストがほぼ接近し、需給のしこりがほぐれていることを示していたのだ。

その後、衆議院選挙での自民党大勝等をきっかけに、日経平均株価は大きく上昇。2018年1月23日には2万4124円まで上昇、4ヵ月余りでの上げ幅は約5000円まで拡大した。この高値圏で移動平均線の関係を見ると、今度は25日線と200日線は2600円程度(2万0720~2万3320円)も大きくかい離していた。その直後、米長期金利の急上昇等を受けて、日経平均株価は急落。その後の下げ幅は3500円超。短期的な上昇に踊ることなく、冷静に短期線と長期線をみている投資家にとっては、しかるべき調整にも映ったであろう。

日本株は短期でやや過熱気味でも、中期は上昇か

日経平均株価は3月23日に2万0617円で底入れした。足元では25日線・75日線・200日線が700円弱のなかに集まり、収束している。3本の移動平均線が位置している2万1600~2万2300円台は下値支持ゾーンとして意識されそうだ。

最後に今後の日経平均株価のテクニカル上の重要な価格をあげておこう(5月18日時点)。
2万4124円 2018年1月高値(年初来プラス5.97%)
2万3098円 浮き島のマド埋め(週足)
2万2967円 3分の2戻し(2万4124円→2万0617円の下げ幅に対して)
2万2764円 2017年末値
2万2371円 半値戻し(2万4124円→2万0617円の下げ幅に対して)
2万2339円 25日線(短期線)
2万1951円 75日線(中期線)
2万1629円 200日線(長期線)
2万0617円 2018年3月安値(年初来マイナス9.43%)

短期的にはテクニカル面からみた日本株はやや過熱気味か。日経平均株価は今年初の8週連続高となるなか、いったんの調整局面に備える必要もある。だが前述の通り、中長期的には移動平均線が収束しており、需給改善のサインがうかがえ、今年も「5月に株を売れ」ではなく「5月はまだ株を買っても良い」になるかもしれない。「セルインメイ」におののくよりも、相場の流れを先読みする「先見の明(センケンノメイ)」(失礼)が重要かもしれない。もしここで下落したとしても、中長期的に株高基調を続ける可能性が出てきた日本株を、下値で拾える局面が訪れそうだ。

中村 克彦 みずほ証券 シニアテクニカルアナリスト

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なかむら かつひこ / Katsuhiko Nakamura

IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA)、日本テクニカルアナリスト協会(NTAA)評議員。

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